レコード盤★盤<br>“これぞプロ! の、ものまねレコード”
feature #124

レコード盤★盤
“これぞプロ! の、ものまねレコード”

演芸とレコードをこよなく愛する伊藤一樹が、様々な芸能レコードをバンバン聴いてバンバンご紹介。音楽だけにとどまらないレコードの魅力。その扉が開きます。

伊藤一樹(演芸&レコード愛好家)
Ep.27 / 20 Jan. 2023

←Ep.26

今や一億総芸人時代、とはちと言い過ぎですが、誰もが気軽に面白い動画を投稿できるようになりました。スマホ1つあれば、ちょっとしたネタをすぐにSNSにアップできます。  

一般の方でもすぐにできる芸、素人演芸の定番は今も昔も「ものまね」。芸能人や身近な人の口調や動きをものまねして笑いをとるなんてことは、日頃からよくやりませんか? オイラはよくやっています。そして、人をバカにするなと、よく怒られています。

簡単なものまねが少し発展すると、「〇〇がもし〇〇したら」なんてショート・スタイルになるわけで、こういったネタで一般の方やセミプロの方がテレビに出ることもしばしば。それはそれで面白いですが、これ、先に誰のまねするか言っちゃってますからね。やっぱり演芸ファンとしては、格の違うプロの芸を楽しみたいじゃないですか。というわけで、素人じゃ到底かなわない、プロのものまねレコードをご紹介します。まずはこちらから。

Single Title

ポケット寄席 動物物まね 江戸家猫八 (7インチ)

SS5051 キングレコード

動物の鳴き声をまねる名人、三代目江戸家猫八の至芸が収められた33回転の7インチ盤です。動物だけでなく、虫や鳥の鳴き声も入っています。

江戸家猫八は明治から続く動物ものまねの名跡。詳しくは以前書いたこちらをご参照ください。

針を落とせば聞こえてくる音は、およそ人の口から発せられているとは思えぬ鳴き声。本物なんじゃないのかと疑りたくなるクオリティーです。

2023年はなんと、このレコードの三代目の孫、江戸家小猫(二代目)が、五代目江戸家猫八を襲名します。機会があればぜひ、五代目江戸家猫八襲名披露興行へ足をお運びください。生で聴く江戸家のお家芸、ウグイスの鳴きまねは絶品! 寄席の空間をうねるように鳴き声が響き渡るサラウンドをぜひ体感してみてください。

この『ポケット寄席』というシリーズ、他にもものまねが3枚出ています(他にもあったら教えてください)。それがこちら。

Single Title

ポケット寄席 浪曲物まね 隅田梅若 (7インチ)

SS5052 キングレコード
Single Title

ポケット寄席 人物物まね 桜井長一郎 (7インチ)

SS5053 キングレコード
Single Title

ポケット寄席 演劇声色 片岡鶴八 (7インチ)

SS5054 キングレコード

隅田梅若は、戦後の浪曲ブームを支えた名人8人の節回しを巧みに披露。浪曲のまねで一本立ちしていたということからも、いかに浪曲が人気芸能だったかが伺えます。

桜井長一郎は昭和の銀幕のスターや政治家の口調を、漫談的なトークを交えながら披露。喋りもものまねも超一流。似ているし、面白い。

片岡鶴八はものまねという芸の中でも、「声色」という分野。主に歌舞伎役者をものまねします。このレコードでも、歌舞伎、新派、新国劇の名優たちの芝居の一節を再現しています。見事な芸だと思いますが、感動は今一つ。なんせ元ネタに馴染みが薄いもんで。歌舞伎役者のまねを楽しむような風流な人がほとんどいなくなった今となっては、「声色」ほとんど風前の灯火。レコード聴いて、昔をしのびましょう。

ここまでの4人は、いわゆる寄席演芸のものまね。次はテレビの特番でもお馴染み、ものまねの王道、歌まねをご紹介しましょう。まずこちら。

Album Title

森昌子ショウ 下町の青い空 (LP)

KC8008 ミノルフォン
Track
司会:玉置宏 第三景:マコのものまね七変化

若い頃から実力派歌手と称され、その歌唱力は折り紙付き。歌の巧い人というのは得てして歌まねも巧いもので、森昌子も例に漏れず。『オールスターものまね王座決定戦』の初代チャンピオンでもあります。ご年配の方は、テレビで森昌子のものまねをよく見たという人も多いのでは。このライヴ盤では、森昌子ものまね定番レパートリー、天地真理、アグネス・チャン、桜田淳子を披露。特徴の少ない天地真理にここまで似せられるというのが本当に凄い! アグネス・チャンはロングトーン時の音程がフラットする感じが瓜二つ! ものまねだけでコンサートやってほしかったな。

続いて海外の歌まねレコード。

Album Title

サミー・デイビス・ジュニアのすべて (LP)

JET157 ビクター

日本では歌手としてのイメージの強いサミー・デイビス・ジュニアですが、生粋の芸人です。ボードビル芸人の家に生まれ、3才で初舞台に立ち、10代はずっと巡業生活。その芸人稼業を生き抜くため、様々な芸を身に付けます。ものまねもサミーの持ちネタの一つ。本作はA面丸々ものまね歌唱の企画アルバム。ジャケに記載された歌手たちは、すべて本作で披露されたサミーのレパートリーです。これが激似ですよ、激似! オールド・アメリカンな歌モノ好きはおもわず感嘆の珠玉の芸です。

ものまねはサミーのショウの定番だったそうで、お得意のタップ・ダンスもあり、ヒット・ナンバーもあり、さぞかし楽しいステージだったんだろうな。まさしくスーパー・エンターテイナー。一度でいいからベガスのショウを覗いてみたかったゼ。

こんなサミー・デイビス・ジュニアのようなエンターテイナー路線と、日本の寄席演芸的な要素を併せ持つ才人を最後にご紹介しましょう。

Album Title

Dancin’ Yah 団しん也 (LP)

SJX30192 ビクター

日本のエンターテイナー、団しん也による、架空のショウという設定のコンセプト・アルバム。司会、出演者、観客を団しん也一人で演じます。もちろん、出演者はみんなものまね。フランク永井、サッチモ、橋幸夫、野坂昭如、ナット・キング・コールなどなど、和洋ジャンルを問わずにまねまくり。オイラが一番好きなのは三遊亭圓生の歌う「My Funny Valentine」。圓生が歌ったら本当にこんな感じなんだろうなって思わせる説得力。これぞ芸の力。ああ、ディナー・ショウに行きたい。

今回は、素人芸とは一線を画するプロのものまね芸をレコードでみてきました。ただ、いくらすごい芸とはいえ、時代が変わっていくと、ものまねの対象となる人物がわからなくなってしまう。ものまねという芸能がもつ宿命です。芸を観ているその時間が楽しければそれでいいのだろうけど、素晴らしい芸が残らないのは残念だな。

その点、動物ものまねには普遍性があります。五代目江戸家猫八先生、その至芸を後世に残して、江戸家の屋号で未来永劫人々を楽しませてください。まずは、三月下席からはじまる襲名披露興行が楽しみです。

(つづく)

Profile
1985年東京都東村山市出身。演芸&レコード愛好家。ジャズ・ギタリストを志し音大へ進学も、練習不足により挫折。その後、書店勤務を経て、現在はディスクユニオンにて勤務。出身地の影響からか、ドリフで笑いに目覚める。月数回の寄席通いとレコード購入が休日の楽しみ。演芸レコードの魅力を伝えるべく、2019年12月に『落語レコードの世界 ジャケットで楽しむ寄席演芸』(DU BOOKS)を刊行。
https://twitter.com/RAKUGORECORD
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