レコード盤★盤<br>“正月は過ぎても酒が飲めるぞ~”
feature #082

レコード盤★盤
“正月は過ぎても酒が飲めるぞ~”

演芸とレコードをこよなく愛する伊藤一樹が、様々な芸能レコードをバンバン聴いてバンバンご紹介。音楽だけにとどまらないレコードの魅力。その扉が開きます。

伊藤一樹(演芸&レコード愛好家)
Ep.16 / 20 Jan. 2022

←Ep.15

新年一発目の連載ですが、年が明けてもう20日あまりが経過。新年会シーズンもほぼ終わり。そもそもコロナで新年会なんてやってないよって方も多いでしょう。思う存分に酒をあおり、友と語らっていたあの日が懐かしいですね。

そんなとき我々には、聴くだけで宴会気分に浸れるあの名曲があります!

Single Title

日本全国酒飲み音頭 バラクーダー (7インチ)

TP10670 東芝

なんとも能天気なジャケットが素晴らしい。歌詞はご存知の方も多いでしょう。ディズニーの「ビビデバビデブー」にそっくりのメロディーにのせて、

〽一月だ正月だ酒が飲めるぞ 酒だ飲める飲めるぞ 酒が飲めるぞ

で始まり、二月は節分、三月はひな祭りと続き、毎月毎月一年中酒が飲めます。元は海外からの留学生が日本の行事を覚えるために飲み屋で歌っていた替え歌だそうです。歌われていた場所、歌っている内容ともに、正真正銘の酒飲みソングです。

シングル盤が有名過ぎてあまり知られていないのですが、ほとんど同じジャケットのLPもあります。

Album Title

日本全国酒飲み音頭 (LP)

TP60358 東芝
SIDE A
1.日本全国酒飲み音頭-バラクーダー 2.お座敷小唄-奥村チヨ 3.先斗町小唄-小松みどり 4.ありがたや節-黒木憲 5.まつの木小唄-奥村チヨ 6.キュッキュ節-松山恵
SIDE B
1.酒場小唄-松山恵子 2.いい湯だな-デューク・エイセス 3.ゴルフ小唄-小松みどり 4.ドリフのズンドコ節-ザ・ドリフターズ 5.大東京音頭-葵ひろ子 5.盛り場ズンドコ-名取市郎

収録内容をみてわかる通り、宴会ソングのオムニバス・レコードです。かつて宴会では、必ず歌われる定番ソングというものがありました。温泉宿で浴衣姿のオジサンたちが、手拍子しながら歌っている。そんな光景、昭和の日本映画などで観たことがあるのではないでしょうか。羽振りの良い団体客は、地元の芸者や幇間をよんでどんちゃん騒ぎをしたのでしょうが、そんなことをすればかなりのお金が飛びます。みんながみんな、そんな豪遊ができるわけではありません。

また、日本の近代化という名の西洋化にともない、邦楽への素養が希薄な人が増えていきます。邦楽に馴染みがない人にとって、単旋律が主体の三味線を伴奏に唄うのは、なかなか難しい技術です。

そんな時に便利なのが、カラオケです。現在は至るところにカラオケ・ボックスがあり、自宅で手軽にカラオケを楽しめる機器やアプリがありますが、かつては高価な8トラック・テープを用いたカラオケ機器が主流。そんな機材がなくとも手軽に楽しめたのが、1970~80年代に量産されたカラオケのレコード。今じゃほとんど使われることのない昭和の遺物です。

今回はそんなカラオケ・レコードの中から、ジャケットが楽しい宴会カラオケ・レコードをご紹介しましょう。まずはこちら。

Album Title

宴会ソングカラオケ集 (LP)

SKK851 キングレコード
SIDE A
1.まつのき小唄 2.炭坑節 3.ドンパン節 4.さのさ 5.ノーエ節 6.ダンチョネ節
SIDE B
1.お座敷小唄 2.花笠音頭 3.男なら 4.黒田節 5.北海盆唄 6.野球拳

カラフルなお銚子と時代を感じさせるマイク。安上りなデザインでありながら、気持ちがパァっと明るい気分になるジャケットです。収録内容はお座敷ソングや民謡、新民謡。定番の宴会ソングです。演奏はキング・オーケストラ。リズム・セクション入りの洋楽器のカラオケですので、歌いやすさ抜群です。

お次はこちら。

Album Title

カラオケ・トップ・リクエスト 決定盤!宴会カラオケ32 (2LP)

25AH624~5 CBS・ソニー
DISC1 SIDE A
1.林檎殺人事件 2.透明人間 3.北の宿から 4.カナダからの手紙 5.時には娼婦のように6.昔の名前で出ています 7.絶体絶命 8.ダーリング
SIDE B
1.長崎は今日も雨だった 2.くちなしの花 3.モンテカルロで乾杯 4.時間よ止まれ 5.二人でお酒を 6.おゆき 7.青葉城恋歌 8.銃爪(ひきがね)
DISC2 SIDE A
1.マイ・ウェイ 2.愛して愛して愛しちゃったのよ 3.青春時代 4.同期の桜 5.世界は二人のために 6.別れの朝 7.想い出の渚 8.宇宙戦艦ヤマト
SIDE B
1.雪が降る 2.およげ!たいやきくん 3.花笠音頭 4.風 5.まつの木小唄 6.黒い花びら7.デンセンマンの電線音頭 8.君といつまでも

ジャイアン的「ホゲー」なジャケット。漫画家・黒鉄ヒロシによるイラストです。後ろにはおじいちゃんおばあちゃん、子供に犬までいるので、家族や親族での宴会でしょうか。それを反映してか収録曲には、『宇宙戦艦ヤマト』や『およげ!たいやきくん』など、子供でも歌える曲が入っています。

このレコードは80年代に制作されたものですが、この時代になると宴会で歌われる曲は多様化。いわゆる宴会ソングだけでなく、当時のヒットチャート系の曲も多く収録されています。みんなが知っている定番宴会ソングをみんなで歌ってどんちゃん騒ぐというより、個人個人が得意な曲、好きな曲を歌うスタイルが出てきたということでしょう。宴会での歌のスタイルの変遷を、レコードが体現しているのではないでしょうか。

お次も80年代に制作されたと思われるこちら。

Album Title

大宴会 カラオケ (2LP)

25AH1301~2 CBS・ソニー
DISC1 SIDE A
1.ハイスクールララバイ 2.守ってあげたい 3.メモリーグラス 4.まちぶせ 5.長い夜 6.もしもピアノが弾けたなら 7.サチコ 8.「ヒゲ」のテーマ
SIDE B
1.軍艦行進曲(軍艦マーチ) 2.大学かぞえうた 3.野球けん 4.有難や節 5.まつの木小唄 6.愛して愛して愛しちゃったのよ 7.同期の桜 8.世界は二人のために
DISC2 SIDE A
1.ルビーの指輪 2.シャドー・シティ 3.出航 4.羯徒毘璐薫’狼琉 5.ダンシング・オールナイト 6.YOUNG MAN(Y.M.C.A.) 7.二人でお酒を 8.君といつまでも
SIDE B
1.奥飛騨慕情 2.みちのくひとり旅 3.人生かくれんぼ 4.女心は港の灯 5.命あたえて 6.函館本線 7.ふたり酒 8.ブランデーグラス

年下の女性の方に手を回す、今なら完全にセクハラなジャケ。こちらのレコードでは、ニューミュージック系の曲も収録されています。その他、演歌、定番宴会ソング、チャート系などが収録。面白いのは、「軍艦行進曲」、「ヒゲのテーマ」といったインスト・ナンバーも収録。余興のBGMとして使われたのでしょうか?

お次はこちら。

Album Title

宴会ソング・カラオケ集 (2LP)

YL2051~2 ユピテル
DISC1 SIDE A
1.昔の名前で出ています 2.北の宿から 3.津軽海峡・冬景色 4.夜の銀狐 5.ついて来るかい 6.北帰行 7.くちなしの花 8.そんな夕子にほれました
SIDE B
1.星の砂 2.渚のシンドバッド 3.勝手にしやがれ 4.あずさ2号 5.小指の想い出 6.心のこり 7.君といつまでも 8.青春時代
DISC2 SIDE A
1.女のみち 2.よこはま・たそがれ 3.なみだの操 4.夜霧よ今夜も有難う 5.なみだ恋 6.夢は夜ひらく 7.知床旅情 8.船頭小唄
SIDE B
1.松の木小唄 2.ヨサホイ数え唄 3.キュッキュラキュ節 4.スーダラ節 5.同期の桜 6.ラバウル小唄 7.炭坑節 8.およげ!たいやきくん

えー、特に収録内容への考察はありません。ネタ切れです。ただジャケットが面白かったので載せました。先にも書きましたが、十分にカラオケが普及した今、カラオケ・レコードの第一の用途は「ジャケットを楽しむ!」につきます。オイラがこのレコードを買った理由も、ジャケットが面白いからです。

最後にご紹介はこちら。

Single Title

宴会用かくし芸レコード1 懐かしのメロディー (7インチ)

KR1058 ポリドール
SIDE A
1.赤城の子守唄 2.旅笠道中
SIDE B
1.野崎小唄 2.国境の町

このレコードは、宴会で歌を披露するための練習ができるレコード。左チャンネルにリード・ボーカルが録音されており、これに合わせて練習。一通り歌えるようになったら、左チャンネルを絞って伴奏をバックに歌うというもの。なかなか面白い趣向をこらしたレコードです。

しかし、ジャケットの飲み方が酷いですね。宴会が楽しいのはわかりますが、膳に肘ついて寝転がってるし、お銚子とお猪口は転がって酒がこぼれてるし、ハメを外し過ぎです。今も昔も、酒は飲んでも飲まれるな。騒がしい宴会はレコード・ジャケットの中だけにして、節度を持ってお酒を楽しみたいものです。

というわけで、レコのジャケ見て我がふり直せ。ここまで紹介した昭和の宴会カラオケ・レコードでは、今はやってはいけない数々の行為がジャケットに載っております。そんな時代もあったねと懐かしみつつも、令和の時代にふさわしいスマートなお酒との付き合いを我々はしていこうじゃありませんか。これを持ち待ちまして、宴会レコード・コレクターの新年の挨拶と代えさせていただきます。

何はともあれ、今年もよろしくお願いいたします。

つづく

Profile
1985年東京都東村山市出身。演芸&レコード愛好家。ジャズ・ギタリストを志し音大へ進学も、練習不足により挫折。その後、書店勤務を経て、現在はディスクユニオンにて勤務。出身地の影響からか、ドリフで笑いに目覚める。月数回の寄席通いとレコード購入が休日の楽しみ。演芸レコードの魅力を伝えるべく、2019年12月に『落語レコードの世界 ジャケットで楽しむ寄席演芸』(DU BOOKS)を刊行。
https://twitter.com/RAKUGORECORD
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