ポケット寄席 動物物まね=江戸家猫八
1.えんまコオロギ
2.コオロギ
3.鈴虫
4.イモ虫
5.小綬鶏
6.時鳥
7.鶯
8.カエル
9.猫
B
1.時鳥
2.鳩
3.笑い鳩
4.鶏
5.雛鳥
6.丹頂鶴
7.コンドル
伊藤一樹(演芸&レコード愛好家)
10 Sept. 2020
古今東西の演芸好き、かつ、アナログ・レコードが好きなオイラにとって、先人たちの至高の芸がレコードで聴けるのは嬉しい事この上なし。音盤の溝に刻まれた演芸は、落語や浪曲といったメジャーなものだけでなく、色物と呼ばれる様々な寄席演芸が残されている。今回ご紹介するのは、そんな色物と呼ばれる芸の中から動物物まねのレコード。三代目江戸家猫八の『ポケット寄席』。動物物まねの伝統を守り続ける「江戸家」の珠玉の名人芸が収められています。
「江戸家」は、明治から続く屋号。動物の鳴きまねで客寄せをする飴売りが、その芸を認められ寄席に出演した際に江戸家猫八(初代)を名乗ったのが始まり。ちなみに、三代目江戸家猫八は初代の六男。四代目猫八は三代目猫八の長男。三代目猫八の長女の夫は、三代目三遊亭圓歌一門総領弟子の三遊亭歌司で、次女は現在寄席で活躍中の江戸家まねき猫。四代目猫八の長男はこれまた現在寄席で活躍中の二代目江戸家小猫。とまあ、見事なまでの寄席芸人一家でございます。
それでは早速『ポケット寄席』を聴いてみることとしましょう。
お馴染みの名人芸が7インチ33RPMの中にたっぷりと収録されています。虫の鳴き声は口笛で、動物や鳥の鳴き声は声色や指笛を使って再現。巧いな~と感心して聴き入ってしまいます。
ところで、あれ、リアルなコオロギの鳴き声って、どんなんだっけ?
夏も終わりに近づくと、都会に住んでいても虫の鳴き声は聞こえてくるけど、いろいろな虫の声が混じり合い、どれがどれだかよくわからん。
そんな時にも、レコードがある!てなわけで、『四季の虫』というレコードをターンテーブルに載せ、リアルな虫の鳴き声を聴いてみた。
カセット・テープの普及、そして、ソニーのデンスケに代表される民生用録音機器が発売されたこともあって、1970年代後半に起こった生録ブーム。虫の音、野鳥の声、SLの音など、野外録音のレコードが多数発売されました。
本作品では、虫録音の第一人者と言われる(ライナーにそう書いてあるんです!)松浦一郎氏構成・編集の元、ナレーション付きで各虫たちの鳴き声が紹介されています。
余談だが、レコード・ジャケットはやけに解像度が高い。LPサイズで映し出されるコオロギやキリギリスは、鮮明過ぎてチョット気持ち悪い。
それはさておき、秋の夜長に響き渡る虫の声は、なんとなく騒々しいイメージがあるが、レコードに収録されているコオロギやスズムシ一匹一匹の声はとってもか細く繊細。部屋を少し暗くして、スピーカーに耳を傾けると、風情があってイイもんですな。そして何より、猫八の物まねとそっくり!虫の鳴き声とは言われるが、実際には口から声を出して鳴いているわけではない。虫によって音の出し方は様々。猫八が真似るコオロギの仲間たちは、翅と翅や、翅と後脚を擦り合わす事によって、美しい音色を奏でている(このあたりの知識も、ライナーノーツに書いてありました)。その繊細な音色を、猫八は口笛でものの見事に再現している。口の中はどうなっているんだ!本当にすごいぞ!
しかしまあ、この虫のレコード、いくら合間にナレーションで解説が入るとはいえ、こうも各種コオロギ、セミと立て続けに聴かされると、さすがに飽きる(虫好きの皆様、ごめんなさい)。そこのとこ、猫八のレコードは面白い。飽きない。なんでかって、物まねと物まねの合間に語りが入るからですよ。物まねという芸は、ただ似ているだけでは成立しない。それを引き立たせる話芸あってこそ。本物の鳴き声のレコードと聴き比べると、改めて猫八の話芸に魅了されました。
え?どんな事を話しているのかって?
そいつはレコード聴いてのお楽しみ。江戸家猫八に出会うべく、レコード屋さんに出かけましょう!レコ屋にあるのは音楽だけじゃない。虫の声からそれをまねする人まで、あらゆるものが記録(レコード)された音盤が眠っています。その眠りを覚ますのはあなた!かも知れないですね。