GUITAR GRILL<br>“『ラジオ深夜便』から<br>聴こえてきそうな沁みる曲”
feature #164

GUITAR GRILL
“『ラジオ深夜便』から
聴こえてきそうな沁みる曲”

ギターとカヴァーの美味しい関係。ギターにピントを合わせれば、あの曲もこの曲も味わいがガラリと変わる。ギタリストのワダマコトがカリプソ愛を香辛料にして熱く調理します。

ワダマコト
Ep.29 / 17 Jan. 2024

←Ep.28

盛り上がったライブの帰り道。カーステレオのラジオで選んでしまうのは『ラジオ深夜便』だったりする。大して興味のないトークや差し障りのない音楽が耳を癒してくれるのだ。「明日の日の出、日の入りの時間をお知らせします」などと言われても全く知りたくないのだが、なんか良いのである。そして、イージー・リスニングやムード・ミュージックなどと呼ばれるようなジャンルに積極的に手を出す境地にはまだ至っていないのだが、こういうシチュエーションで聴くと沁みるなぁ、というときはある。大人の階段なのかも知れない。

というわけで、そんなラジオから聞こえてきそうなステキなメロディについて、です。「ムーラン・ルージュのテーマ」という曲のカヴァーがやたらと自分の所有しているレコードに収録されていることに気が付いたのだ。

もともとは映画「赤い風車」のテーマ曲として作られたものだという。パーシー・フェイス楽団の録音がとても『ラジオ深夜便』ぽくて良い。

Percy Faith「Where is Your Heart (From “Moulin Rouge”)」

あぁ、環八から第三京浜に向かう道すがら。楽しかった一日を振り返るのである。

この曲はジャズでもよく取り上げられる。ニューオーリンズのトランぺッター、ウィンギー・マノンのヴァージョンは「フレンチ・カンカン」のメロディを挟んでユーモラスな仕上がり。

Wingy Manone「The Theme from Moulin Rouge」

エロール・ガーナーのピアノで聴くのも優雅で大胆で素晴らしい。

Erroll Garner「The Song from Moulin Rouge 」

そして、アルト・サックスの偉人。比類なきテクニックを誇った名人アール・ボスティックも演っていた。

Earl Bostic「The Song from Moulin Rouge 」

チャチャチャの定番でもあるようで、ラテン楽団にもやたらと取り上げられる。英国の名門楽団として当時から日本盤のレコードも沢山リリースされており、カリプソ好きには「London Is the Place for Me」でも知られるエドムンド・ロスのヴァージョン。

Edmnundo Ros「The Moulin Rouge Theme」

ニューヨークの1950年代チャチャチャ・コンボ、プラヤ・セクステットのもギターがかっこ良くて好き。

La Playa Sextet「Moulin Rouge」

ゆったりしたテンポでピアノが歌い上げるジョー・ロコのヴァージョンも粋だ。

Joe Loco & His Quintet「Moulin Rouge」

そしてトリニダード・トバゴでもクラレンス・カーヴァン楽団の名演がある。猛烈にエレガントに仕立てられた譜面のはずだが、いざ演ってみるとなんだかイナタくて、そのアンバランスさがトリニダード産の絶妙な味わい深さなのですな。楽器が上手とかアンサンブルがきれいとか、そういうところでなくて。ひとりひとりの音がユレもカスれも含めてとても味わい深い、なんとも愛おしい合奏だ。

Clarence Curvan Orchestra「Moulin Rouge」

最後は心洗われるサム・クックの名唱で締めくくろう。「あなたの唇はすぐそばにあったとしても、あなたの心はどこにありますか」と歌われる「Where Is Your Heart」が歌詞つきのタイトル…。切ない。第三京浜を降りる頃には涙でフロントガラスが見えなくなってしまうかも知れない。危ないからゆっくり帰ることにしましょう。

Sam Cooke「Song from Moulin Rouge (Darling,Where is Your Heart)」

(つづく)

Profile
カリプソ狂。結成20年を迎えるライヴバンド、カセットコンロスを率いるギタリスト / シンガー。ソロ活動ではWADA MAMBO名義でもアルバムをリリース。ブルース~ジャンプ&ジャイヴ経由カリプソ。BLUES & SOUL誌の連載ほか、音楽についての執筆業も。妻x1、クロネコx1、シロネコx2、と共に暮らしています。
音楽活動のない日は、東横線の綱島駅と大倉山駅が最寄りの、音楽と雑貨の店ピカントにいます。
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