ギターとカヴァーの美味しい関係。ギターにピントを合わせれば、あの曲もこの曲も味わいがガラリと変わる。ギタリストのワダマコトがカリプソ愛を香辛料にして熱く調理します。
ワダマコト
Ep.14 / 5 Sep. 2022
今回はちょいと目先を変えて、米国産カリプソの名曲から掘り下げてみたい。というのも、自分にとってのカリプソの入り口が、40〜50年代のジャイヴ・ミュージックのアーティストたちがレパートリーにしていたカリプソ・ナンバーや似非ラテン曲だったから、いまだにとても愛着がある。
なかでも、ルイ・ジョーダンの「Run Joe」は格別に好きな曲。沢山のカヴァーがある。
まずは1948年のデッカ録音。
トリニダードのカリプソを沢山聴けば聴くほど、こんな感じの曲はありそうでないのだ。こんなキャッチーでハッピーな雰囲気はルイ・ジョーダンならでは。
1956年にマーキュリー・レーベルで再演しているヴァージョンもスピード感増してソリッドでカッコいいのだ。
ロックン・ロールの王様、チャック・ベリーはルイ・ジョーダンをアイドルとしていたことは有名で、実際にこの曲をカヴァーしている。チャック・ベリーのユーモラスな雰囲気はルイ・ジョーダン直系だったのだなぁ、と痛感。
トリニダードでもカヴァーされているが、これはなかなかにヒネリが効いたアレンジだ。
スカに仕立てのはストレンジャー・コール。
男ばかりじゃないか!というご意見もごもっとも。女性も歌っている。バハマのカリプソ・ママこと、モーリーン・デュヴァリエのヴァージョンもスウィンギーですてきだ。この、ちょっと鼻にかかった声がたまらなくキュートなのだ。
ネヴィル・ブラザーズも名作『Fiyo on the Bayou』で演っていた。ネヴィルにしてはなんだか爽やかだが、こういうのも良いすな。
とどめは、ゴーゴーで。このスッカスカのコール&レスポンスが最高にカッコ良い。
時代も国境も越えて津々浦々「ラン・ジョー」なのである。これだけ様々なアレンジで聴けば、どれかは少しは気になるのではないだろうか。という、地味な布教活動であります。壺とか水晶を売りつけるわけではないのでご安心を。
(つづく)
- Profile
- カリプソ狂。結成20年を迎えるライヴバンド、カセットコンロスを率いるギタリスト / シンガー。ソロ活動ではWADA MAMBO名義でもアルバムをリリース。ブルース~ジャンプ&ジャイヴ経由カリプソ。BLUES & SOUL誌の連載ほか、音楽についての執筆業も。妻x1、クロネコx1、シロネコx2、と共に暮らしています。
音楽活動のない日は、東横線の綱島駅と大倉山駅が最寄りの、音楽と雑貨の店ピカントにいます。
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Our Covers #043 ワダマコト