ギターとカヴァーの美味しい関係。ギターにピントを合わせれば、あの曲もこの曲も味わいがガラリと変わる。ギタリストのワダマコトがカリプソ愛を香辛料にして熱く調理します。
ワダマコト
Ep.10 / 26 Apr. 2022
映画『カリプソ・ローズ』をご覧になった方は、60年代に女性がカリプソの世界で活躍することがいかに難しかったかはご存知だろう。しかし同じトリニダード・トバゴでもカリプソ以外のポピュラー音楽というのはしっかりあって、当然そういうシーンでは女性シンガーも存在したわけだ。60年代からティーン・アイドルとして人気を博し、カリビアン・ソウル・クィーンと呼ばれるまでになったメイヴィス・ジョンもそんなひとり。のちにはMAE & DAVEという男女デュオでも活躍したり、ファンクの時代にもしっかり対応しているが、今回は若かりし頃のお話。
RCAヴィクターに残されたゴスペルの古典「Come by Here」のカヴァーは、RAのコンピレーション『CALYPSO MANIA!』に数曲収録されているスモール・コンボ、ロッカフェラスをバックにしたもの。まだ幼く瑞々しい歌声が頑張っていて微笑ましい。
この曲はゴスペル・クラシックなので沢山のグループが歌っているが、猛烈にカッコ良いのがゴスペル・キーノーツのこれ。
もう一曲、メイヴィス・ジョンがTELCOレーベルに残した強力なカヴァーも紹介しておきたい。なんと、J.B.の「It’s a Man’s Man’s Man’s World」!
J.B.の原曲をなぞったズッシリと重いムードをバックにして、幼きメイヴィスが精一杯のシリアスな声で語りかける。男性社会だったトリニダード・トバゴにあって、うら若き少女による「It’s a Man’s Man’s Man’s World」。「この世は男の世界。しかし女性なしには何もない」という歌詞はどう響いたのだろう。
(つづく)
- Profile
- カリプソ狂。結成20年を迎えるライヴバンド、カセットコンロスを率いるギタリスト / シンガー。ソロ活動ではWADA MAMBO名義でもアルバムをリリース。ブルース~ジャンプ&ジャイヴ経由カリプソ。BLUES & SOUL誌の連載ほか、音楽についての執筆業も。妻x1、クロネコx1、シロネコx2、と共に暮らしています。
音楽活動のない日は、東横線の綱島駅と大倉山駅が最寄りの、音楽と雑貨の店ピカントにいます。
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Our Covers #043 ワダマコト