ギターとカヴァーの美味しい関係。ギターにピントを合わせれば、あの曲もこの曲も味わいがガラリと変わる。ギタリストのワダマコトがカリプソ愛を香辛料にして熱く調理します。
ワダマコト
Ep.20 / 6 Mar. 2023
ヒューイ “ピアノ” スミスの訃報が届いた。去年、ブルース界隈の先輩ライターである陶守正寛さんによるヒューイの伝記の日本語訳書『ニューオーリンズR&Bをつくった男 ヒューイ・“ピアノ”・スミス伝: ロッキング・ニューモニア・ブルース』が出て、ちょうどその機会に日本のファンたちもヒューイの音楽の素晴らしさを振り返っていた最中のことである。
ヒューイと言えばなんといっても「Rocking Pneumonia and the Boogie Woogie Flu」が有名だ。
〈ロッキン肺炎とブギウギ流感〉とはなんとも物騒なタイトルだが、ゆるゆるにハッピーなニューオーリンズR&Bの古典。このムードなのである。コロナの肺炎もインフルもごめんだが、こんなロッキン肺炎にブギウギ・インフルならご機嫌だ。
そんなヒューイ作の古典は数あれど、カリブに繋がるものといえば、「Sea Cruise」だ。
全米で大ヒットしたのはフランキー・フォードのヴァージョン。
そしてスカになった「Sea Cruise」。
ジョン・ホルトのヴァージョン。
そして不思議なのが、ニューオーリンズのシンガー / ピアニストのクラレンス “フロッグマン” ヘンリーが歌った「Sea Cruise」がホルトのヴァージョンとどうやら同じトラックなのである。
どういう経緯なのだろうか。ジョン・ホルトのレコーディングのためのデモ歌唱だったのか、はたまたジャマイカからオケのトラックだけ取り寄せるなんてことがあったのか。もしくは、クラレンス・ヘンリーがジャマイカに赴いたのだろうか。ミステリアスな一曲だ。
クラレンス・ヘンリーはフロッグマンの愛称通り、カエルの鳴き声のような独特の歌い方をまじえた「I Ain’t Got No Home」で人気を博したひと。
ファッツ・ドミノを小さくしてコミカルにしたような存在、と言ったら怒られるだろうか。でも、そんなちょっと小粒な感じがたまらなく魅力的なフロッグマンなのである。一応、クラレンス “フロッグマン” ヘンリーの代表的なバラードも押さえておいてください。めちゃくちゃ良いメロディなので。
(つづく)
- Profile
- カリプソ狂。結成20年を迎えるライヴバンド、カセットコンロスを率いるギタリスト / シンガー。ソロ活動ではWADA MAMBO名義でもアルバムをリリース。ブルース~ジャンプ&ジャイヴ経由カリプソ。BLUES & SOUL誌の連載ほか、音楽についての執筆業も。妻x1、クロネコx1、シロネコx2、と共に暮らしています。
音楽活動のない日は、東横線の綱島駅と大倉山駅が最寄りの、音楽と雑貨の店ピカントにいます。
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Our Covers #043 ワダマコト