ギターとカヴァーの美味しい関係。ギターにピントを合わせれば、あの曲もこの曲も味わいがガラリと変わる。ギタリストのワダマコトがカリプソ愛を香辛料にして熱く調理します。
ワダマコト
Ep.7 / 21 Jan. 2022
最近、U-NEXTやNetflixなどでやたらと映画を沢山観るようになって、そうするとやはり評判の良い映画はだいたい面白いなぁ、と。いたって普通の感覚だが。音楽も然り。クラシックとかスタンダードになっているものはそれなりに理由があるわけですな。個人的には、あらゆる王道を避けて歩んできたもんで、恐らくそのスジの方に言わせればブルースで言うところの「Sweet Home Chicago」か「Stormy Monday」くらいに大定番のラテンの古典曲なども、自分には新たな発見だったりして。基本がなってないと反省しつつ、知る喜びを噛み締めたり。
たまたま最近色んなヴァージョンを耳にする機会があった「Adios」という曲もたぶんそういうスタンダードなのだろうと思う。調べてみると、Enric Madriguera楽団による31年録音に行き当たった。
のちにXavier Cugatが1940年に吹き込んでいるので、これはアメリカでヒットしたのだろう。
なぜにこの曲が引っかかったかと言えば、このAメロのリフレイン部分が聴き憶えがある。ディジー・ガレスピーの「Too Much Weight」という曲と同じなのだ。
40年代に《プレスティジ》レーベルに吹き込まれた、インチキ・カリプソ風味な歌モノである。このディジーのスモール・コンボでの演奏が最高なのだ。20年以上前にやっていた世田谷ジャンボリーというバンドでもカヴァーしたし、カセットコンロスではジャズ・シンガーのAkikoちゃんをヴォーカルで録音を残した。巽朗くんのサックス・インスト・ヴァージョンも吹き込んだ。いまもたまらなく好きな曲だ。すごく好みではあるが、この雰囲気はきっとディジーのオリジナルではないだろうなぁ、などと思いつつ、色々調べたけれど真相には辿りつけずにいた。唯一、この曲をカヴァーした、これまた大好きなミッキー&シルヴィアのヴァージョンを発見したときは、オレは正しい道を歩んできたのだと、なんだかよくわからない確信を得たのだった。
「Adios」と「Too Much Weight」を比較して、Aメロのお尻は違うしBメロは丸ごと原曲とは異なるので厳密にはカヴァーというか引用というか。ただパーツは沢山流用されている。スカなんかでも、よくこういうパクりのようなカヴァーのような引用のような、しかしタイトルは違うという事例に出くわすけれど、あんな感じだ。
ひょっとしたら、ディジーのヴァージョンまでにもうワンクッションあったのかも知れないので引き続き調べていきたいと思う。なにかご存じの方いらっしゃったら教えてください。
(つづく)
- Profile
- カリプソ狂。結成20年を迎えるライヴバンド、カセットコンロスを率いるギタリスト / シンガー。ソロ活動ではWADA MAMBO名義でもアルバムをリリース。ブルース~ジャンプ&ジャイヴ経由カリプソ。BLUES & SOUL誌の連載ほか、音楽についての執筆業も。妻x1、クロネコx1、シロネコx2、と共に暮らしています。
音楽活動のない日は、東横線の綱島駅と大倉山駅が最寄りの、音楽と雑貨の店ピカントにいます。
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