GUITAR GRILL<br>“完熟トマト! 下ネタ・カリプソの最高峰を探る”
feature #118

GUITAR GRILL
“完熟トマト! 下ネタ・カリプソの最高峰を探る”

ギターとカヴァーの美味しい関係。ギターにピントを合わせれば、あの曲もこの曲も味わいがガラリと変わる。ギタリストのワダマコトがカリプソ愛を香辛料にして熱く調理します。

ワダマコト
Ep.17 / 1 Dec. 2022

←Ep.16

下ネタ・カリプソと言えば、“大きく強く伸びた竹は彼女を喜ばせる” などと歌う「Big Bamboo」が知られるところだが、女性目線から歌われた「Don’t Touch Me Tomato」も多くのカヴァーを生んだスタンダードだ。

ジューン・ネルソンが歌った1949年録音で作者にクレジットされているのはサム・マニング。

June Nelson「Tomato」

サム・マニングはトリニダード出身で1920年代からニューヨークに渡って録音を残している人物で、30年代には英国に渡り活動、40年代には再びニューヨークに、と英米にカリプソの種を撒いたという意味で重要な人物。

別曲だが、サム・マニング自身の貴重映像も観てほしい。これは、サウンディーズと呼ばれるジュークボックス映画。レストランやナイトクラブのロビーに設置されたスクリーンで、お金を入れて観ることができた、今で言うところのミュージック・ヴィデオである。

Sam Mannin & Bell Rosette「Willie Willie」

ここで聴けるような、カリプソとジャズを掛け合わせたマニングのサウンドは、ルイ・ジョーダンをはじめジャイヴやジャズのミュージシャンによるカリプソの解釈に大きなヒントを与えているような気がする。

ハナシを「Don’t Touch Me Tomato」に戻します。バハマのカリプソ・ディーヴァ、カリプソ・ママのヴァージョンはキュートでパワフルで、カリプソ・ローズなんかにも通じる明るさと朗らかさ。健康的な下ネタ歌唱がステキだ。

Calypso Mama「Don’t Touch Me Tomato」

同じくバハマのピアニストでシンガーのジョージ・シモネット。本人は歯の抜けたおっさんなのだが、愉快に女心を歌い上げる。

George Symonette Sextette「Don’t Touch Me Tomato」

イントロのギターの音でグッと引き込まれてしまうマリー・ブライアントの50s録音。歌はエレガントに迫る。

Marie Bryant「Don’t Touch Me Tomato」

フランスに渡って活躍したジョセフィン・ベイカーもビッグバンドをバックに歌っている。

Joséphine Baker「Don’t Touch Me Tomato」

ジャマイカ好きには、このヴァージョンがお馴染み。チエコ・ビューティ&にゃ〜まんずでもレパートリーにしていたことがあった。チエコさんのも素晴らしいのです。

Phillis Dillon「Don’t Touch Me Tomato」

男性目線で歌うときは、トマトをバナナに変えます。ミロ&ザ・キングスによるお気楽ヴァージョン。

Milo and the Kings「Don’t Touch Me Banana」

そんなこんな。女性が歌うキュートでユーモラスなカリプソとして世界中で歌われた「Don’t Touch Me Tomato」。しかし、映画『カリプソ・ローズ』でも語られていたように、カリプソの本場トリニダードでは50年代当時はまだまだ女性カリプソニアンは市民権を得ておらず、トリニダード産の「Don’t Touch Me Tomato」が見当たらないというのが、なんとも皮肉だ。

(つづく)

Profile
カリプソ狂。結成20年を迎えるライヴバンド、カセットコンロスを率いるギタリスト / シンガー。ソロ活動ではWADA MAMBO名義でもアルバムをリリース。ブルース~ジャンプ&ジャイヴ経由カリプソ。BLUES & SOUL誌の連載ほか、音楽についての執筆業も。妻x1、クロネコx1、シロネコx2、と共に暮らしています。
音楽活動のない日は、東横線の綱島駅と大倉山駅が最寄りの、音楽と雑貨の店ピカントにいます。
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