ギターとカヴァーの美味しい関係。ギターにピントを合わせれば、あの曲もこの曲も味わいがガラリと変わる。ギタリストのワダマコトがカリプソ愛を香辛料にして熱く調理します。
ワダマコト
Ep.11 / 26 May 2022
チエコ・ビューティ&にゃ〜まんずでもご一緒しているTICOさんのリトル・テンポもアルバムが完成したそうで、これまた楽しみ。TICOさんと言えばスティール・パン。ということで、今回はスティール・パンの音をご紹介。
たまにDJに誘われたりすると必ずかけたくなるのが、ヴァージン島のスティール・バンド、マイク・アレクサンダー&ザ・ポット・スティーラーズだ。洗練やアーティスティックなんて言葉とはほど遠いが、とても人懐っこい音楽である。大好きなアルバムだ。
まずは「You Are My Sunshine」。
どうよ、この野暮ったさ。スティール・パンに関してあまり詳しくないのだが、スティール・パンが現在のように確立される前の、ピンポンと呼ばれていた時代のものなのだろう。音のアタックに煌びやかさが皆無で、そこがなんとも味わい深い。錆びている。音が伸びない。そこが良いのだ。そして何気にベースラインとリフ、メロディの絡みが実に巧妙なのだ。中盤で出てくる速いフレーズなんて、田舎のライオネル・ハンプトンみたいではないか。これは奇跡の名演だと思う。
ヴァージン島のカリプソ楽団もホテルバンドならではというか、バハマやバミューダあたりに通じるユルさがある。観光客を愉しませるためのレパートリーを並べて日夜営業演奏である。困ったときは、とにかくビートルズなのだ。
そして、マイティ・スパロウの「Obeah Wedding」。
ロード・キチナーの「My Brother Your Sister」。
カリプソニアン二大巨頭のカヴァーもあって、押さえるところはしっかり押さえている。夏が待ち遠しくなる一枚なのである。
(つづく)
- Profile
- カリプソ狂。結成20年を迎えるライヴバンド、カセットコンロスを率いるギタリスト / シンガー。ソロ活動ではWADA MAMBO名義でもアルバムをリリース。ブルース~ジャンプ&ジャイヴ経由カリプソ。BLUES & SOUL誌の連載ほか、音楽についての執筆業も。妻x1、クロネコx1、シロネコx2、と共に暮らしています。
音楽活動のない日は、東横線の綱島駅と大倉山駅が最寄りの、音楽と雑貨の店ピカントにいます。
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Our Covers #043 ワダマコト