野田晋平(パライソレコード)
Ep.3 / 04 MAY 2020
「あどけない」「純粋無垢」など大人たちの作った枠にはめられるこども音楽。しかしそのあり方は千差万別。「こどもはいいよね〜」なんて無責任なこと言いますが、こどもだって色々あるさ。ということで枠にはまった大人たちへのこどもからのカヴァー逆襲!
アンディ・ウィリアムス・ショーにレギュラー出演し人気となったオズモンド・ブラザーズはのちにオズモンズそしてダニー・オズモンズなどの各ソロとまるで出世魚のように成長していった米国兄弟グループですが、まだまだ初々しい1965年作ではカヴァー曲も満載。コーデッツなどでおなじみの名曲「Mr.Sandman」では早すぎたマッシュアップとばかりにオケがビーチボーイズの「I Get Around」風に!? こりゃお見事っ!
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Saturday in the Park
米国70年代の人気ホームドラマ『ゆかいなブレディ家』から登場したブラディ・バンチはそのあどけない歌声とポップなサウンドがソフトロックファンの間では周知のグループ。中でも名盤呼び声高いこちらの1972年のアルバムではビートルズやマイケル・ジャクソンなんかに混じってシカゴの「Saturday in the Park」をカヴァー。70年代らしい洗練のアレンジとちびっこたちのユニゾンのアンバランスがたまりませんな。
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Good Vibrations
こども音楽の純粋無垢さを語る上で外すことのできない70年代カナダのとある小学校で録音された発掘音源。収録されたのはビーチボーイズにデビッド・ボウイ、ポール・マッカートニーといったカヴァー曲集。 エンターテイメント業界に残された上記2グループと違い非商業なクラス授業もしくは放課後活動的な代物のためピュアさにおいては他を寄せつけない感じですが、逆にその生々しさが楽しさ反面、学校というこども社会の強制の元に行われてたんじゃないかなんて気持ちも燻ってきて、少し狂気にも感じてしまう怖い盤でもあります。
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Yesterday Once More
怖いもんなし!というのはこどもに許された特権でありますが、米国3姉妹シャッグスが残した数々の音源はまさに知らぬが仏のイノセンスでバンドごっこをしちゃってます。体裁ばかりを考えうまくまとめようとする大人には到底太刀打ちできないこども世界の哲学。そんな訳でカーペンターズ「Yesterday Once More」は降参の気持ちで何度だってリピート再生してしまいます。
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Oooh Baby Baby
あのカーティス・メイフィールドがプロデュースしたシカゴのこどもソウルグループ、ファイブ・ステアステップス1967年作からスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズの名曲「Oooh,Baby,Baby」を。数々のスウィートソウルの名曲を生み出すシカゴともなると甘茶英才教育が幼少期より育まれているのですね。もうとろっとろのカヴァーです。
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Djangology
あどけないこどももいれば早熟すぎるこどももまたいます。4歳からギターを弾き始め10歳前後にして音楽祭で優勝したフランスの「神童」ジプシージャズギタリスト、ビレリ・ラグレーン君。まるでジャンゴ・ラインハルトが乗り移ったのか?と思わせるような超絶プレイでジャンゴナンバーも高速にカヴァーしていきます。すんごいっ!
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Pass the Dutchie
1980年初頭、イギリスに現れたちびっこレゲエバンド、ミュージカル・ユース。彼らの代表曲である「Pass the Dutchie」はレゲエファンを飛び越えてスマッシュヒットとなった名曲ですが、この曲は魅惑の3人組レゲエコーラスグループ、マイティ・ダイアモンズ「Pass the Kouchie」のリメイク。スウィートな原曲から元気発剌なポップミュージックへ。元ネタよりカヴァーの方が有名になった良い例!
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コズミック・サーフィン
最後に日本のこどもカヴァーを。あのYMOの日本武道館公演の前座を務めた小中学生によるテクノポップグループ、コズミック・インベンション。某電子楽器メーカーの創業者の娘である森岡みまを中心に集結したようですが、1982年のシングル「プラトニック学園」のB面ではYMOの「コズミック・サーフィン」をカヴァー。しかも歌詞つき!?「キラキラ〜」「シュワシュワ〜」なんて歌わせちゃう作詞は近田春夫!
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(つづく)
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- 魅惑のオンラインショップ《パライソレコード》主宰。世界中の魅惑サウンドを探し求め、中古レコードをメインに(ほぼ)毎日新入荷を更新中。
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Our Covers #020 野田晋平