野田晋平(パライソレコード)
Ep.2 / 7 APR 2020
春のカタコト日本語カヴァー盤まつり
中古屋なんかに行く人なら必ず見かけたことがある「来日記念盤」「日本企画盤」と称して海外アーティストに日本語で歌わせるという謎のレコード。今やその文化は潰えたかのように思えますが、そのアーカイブはモンド的視点から新たな価値観を持ち愛すべき遺産として好事家たちにより大切に保管されています。今回は「春のカタコト日本語カヴァー盤まつり」と題し、そんなカタコト日本語カヴァーの中でも日本の歌を取り上げた珍味曲たちを集めてみました!
ラテン音楽といえばペレス・プラード、ザビア・クガートなど日本でも人気を博した楽団長がいますが、トリニダートトバコから英国へと渡りスターとなったエドムンド・ロスもそのひとり。中古レコード屋の500円コーナーで必ず見るような人ですが、ちょいと見かけない某所日本庭園ジャケも鮮やかなこのアルバムでは、なんと本人歌唱による「さくら」を披露。そういやこの人日本軍歌までやってるアルバムありますね。癒着がすごい!
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いい湯だな
こちらも日本で人気を博した米国フォークグループ、ブラザーズ・フォアからオリジナルメンバー、ボブ・フリックさん1973年のソロアルバム。作曲家いずみたく作品を取り上げるという完全日本企画盤ですが、その中に「Hot Spring」なんてなんか春めいた曲があるじゃないのなんて思ったらコレ、ドリフでおなじみの「いい湯だな」。英語日本語のチャンポンカヴァー。「サンフランシスコの湯〜」「入浴?ニューヨーク?」なんてオリジナル詞もワールドワイドな世界観に!?和ボッサタッチなサウンドも洒落てます。
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つめ
こちらはアルジェリア出身のフランス系カナダ人美女シンガー、アンヌ・アンデルセンさんが日本に残した1975年のアルバム。アンニュイかつ色っぽいその声で大ヒット映画「エマニュエル夫人」を仏語&日本語ヴァージョンのピンク2本立てで送るアルバムですが、ペギー葉山で知られる「爪」のカヴァーがなんとも言えない味わいがあってたまらんのです。彼女が歌うとまるでフランス映画のワンシーンのよう。東海林修、大野雄二といった面々も参加したメロウアレンジも極上。それでいて日本語も上手いというココロ憎さ!
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六甲おろし
「ハンシンファンハ、イチバンヤッ」の決めゼリフで首位打者も獲得した阪神タイガース助っ人外人トーマス・オマリーさんのもはや伝説と化した「六甲おろし」の歌唱力。ホームランの少ないバッターでしたが、そのパワーは全てこのために温存してたんですね。もはやカヴァーとかそういうレベルではない場外ホームラン級の破壊力。音痴レコード界ではすでに殿堂入りの方なので、今後そんな企画があれば再登板するかもです。
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Hai Sai Oji-San
ジョン・フレンチ(キャプテン・ビーフハート)、フレッド・フリス(ヘンリー・カウ)、ヘンリー・カイザー、リチャード・トンプソン(フェアポート・コンベンション)というアヴァンよりなメンツによるユニットの1987年作。日本企画盤でもなくどう経緯でそうなったのかわかりませんが、喜納昌吉でおなじみの「ハイサイオジサン」をカヴァー。どことなく小難しいアカデミックな雰囲気を漂わせる人たちですが、この部活ノリな歌唱(笑)な〜んだもっと親しみやすい変なおじさんたちじゃないか!と親近感さえ湧いてきます。
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(つづく)
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Our Covers #020 野田晋平