魅惑のオンラインショップ《パライソレコード》がお贈りする、カヴァーソング桃源の世界。
野田晋平(パライソレコード)
Ep.26 / 7 Apr. 2022
新年度、新学期、新生活。不慣れな旅立ちはまず模倣から始めてはいかがなものか。というわけで今回は様々なアーティスト、バンドの初作(アルバム・シングル)に収録されたカヴァー曲を特集。持ち球が少ない故の策? いや自身のオリジナリティを見せつける絶好の見せ場としてのアレンジをどうぞ!
のちに「パンクの女王」と称されるようになるSSW、詩人パティ・スミスの1975年ファーストアルバム『Horses』に収録されたヴァン・モリソンが在籍したゼム「Gloria」のカヴァー。パンククラシックと呼ばれる彼女を代表する1曲に!
Slow Down
ニューヨークがパティならロンドンはクラッシュ「ポリスとコソ泥」といきたいとこですが、今回はジャム「Slow Down」で。ビートルズなどもカヴァーしたR&Rの巨人ラリー・ウィリアムズによるニューオリンズクラシックで、スタイル・カウンシル〜ソロ作にまで続くポール・ウェラーの音楽嗜好が垣間見れる1曲。ネオモッズシーンにも影響を与えたジャムによるこのヴァージョンは数ある曲の中でも最強の仕上がり!
Shake
こちらはオリジナルモッズ、スティーヴ・マリオット率いるスモール・フェイセス1966年のファーストアルバムからサム・クックの代表曲としても知られる「Shake」のカヴァー。ジャズやR&Bなどの黒人音楽をバンドサウンドでグッドリサイクルしたモッズのお手本とも言える素晴らしいアレンジ!
Have Love Will Travel
バンドサウンドでのグッドリサイクラーといえば、モッズよりもさらにワイルドかつ凶悪にアレンジしたのが60’sのガレージバンドたち。その中のビッグボスと言えるソニックス1965年のファースト『Here Are The Sonics』はほぼ(全部?)カヴァー曲で構成された内容ですが、その中でも極悪なのがリチャード・ベリーのR&Bチューン「Have Love Will Travel」。ドゥーワップ調のオリジナルがとんでもないシャウトソングに。ちなみにノースウエストガレージの雄キングスメンでおなじみの「Louie Louie」もリチャード・ベリー!
La Bamba
極悪さではこちらも負けてないテキサス-メキシコ越境サウンド、テックス-メックスの怪人スティーヴ・ジョーダンの初作に収録の「La Bamba」。メキシコ民謡が元の曲をリッチー・ヴァレンスのアレンジによりヒット。ジョーダンによる機材が潰れるんじゃないかって思うほどの暴音は数あるカヴァーの中でも最狂ですね!
Ringo
越境サウンドといえばスカビートで様々な国境を渡ったギャズ・メイオール率いるトロージャンズが1987年のファーストアルバム『Ala-Ska』でカヴァーした美空ひばり「りんご追分」。カタコト日本語で歌われるオリエンタル慕情。最高ですなっ!
家へおいでよ
美空ひばり、雪村いづみと並ぶ三人娘として人気を博した江利チエミ1952年のデビュー曲(SP)となる「テネシーワルツ」のカップリングとして収録されたローズマリー・クルーニーのカヴァー。美空ひばりに匹敵する歌唱力で知られる彼女の15歳とは思えぬものすんごい名演。ちなみに「家においでよ」の作者ロス・バグダサリアンはテープ早回転声(通称「ムシ声」)でおなじみのチップマンクスを生み出す奇才!
(つづく)
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Our Covers #020 野田晋平