野田晋平(パライソレコード)
Ep.1 / 10 MAR 2020
3月は「卒業」の季節。とはいえ晴れ晴れしい卒業といえば学校生活までがほぼで、社会人になると卒業という言葉は悪しき習慣から足を洗う的なニュアンスになりがちですね(わたしも早く卒業したい事多々…)。というわけで今回はそんな「卒業」をテーマにした(こじつけた)カヴァー曲をあれこれと。
「卒業」と言ってまず思いつくのが尾崎豊「卒業」。大人という巨大な組織に抗うあの頃誰もが感じた10代の胸の内を歌い上げた稀代の名曲ですが、元ジャズメンにして何故かLLクールJに感化されCDデビューした超遅咲きラッパー、坂上弘さんの歌う「卒業」は面白さが2周も3周もしてまさにソウルやブルーズの域にまで足を踏み入れちゃってます。御歳84歳。人生の酸いも甘いも嚙み分けた老体の歌う「卒業していったい何 解ると言うのか」のリリック。深すぎますな…
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(I Can’t Get No) Satisfaction
こちらはそんな人間自体を早々に卒業し謎の生命体DEVOへ転身した米国ニューウェイヴ集団。シングル曲でありファーストアルバムにも収録されたローリング・ストーンズ「Satisfaction」のカヴァーはもはや人間であることにすら満足できなかった彼らの卒業ソングと捉えることもできるでしょう。あまりにも脱臼しすぎたこのアレンジ。確かに人間の感覚を超越してる!
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そんなDEVOに憧れて人間を中退した輩による1979年のDEVOトリビュート『DEVOTEENS』は西海岸のFM局KROQの企画に送られてきたカセットテープ音源から選曲された最高のカヴァーアルバム。やはりDEVO好きというだけあってどいつもこいつも変なアレンジばっかりでニューウェイヴ、R&R、ドゥーワップ、電話のプッシュ音まで楽器にしちゃうDIYの極みのような珍味盤です。「Mongoloid」と「Jocko Homo」がそれぞれ3曲も収録されてるくせに、誰も「Satisfaction」やってないというツッコミどころも満載笑。余談ですが2003年サマーソニック大阪で観たDEVOのライブ。盛り上がる終盤、お待ちかねの黄色いつなぎを脱ぎ捨てるパフォーマンスであらわになったメタボリックな肢体は四半世紀という時を経て人間に再入学されたことを確認いたしました。
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夢の中へ
かつては尾崎豊とも浮名を流し「卒業式で泣かないと冷たい人と言われそう」の名フレーズで自身も定番卒業ソングの仲間入りを果たした斉藤由貴さんを今回の締めくくりに。1989年13枚目のシングルでは井上陽水の名曲「夢の中へ」をカヴァー。フォーク調のオリジナルに対しこちらは最新のユーロビートやハウスといったダンスミュージックを取り入れたアレンジで見事リバイバルヒット。808的サウンドエフェクトやウネウネするシンセのウワモノ、中盤でのタブラ&シタールのラーガパートなど昨今の和モノ的ネタ盤としての評価にも値すると思うのですがDJのみなさん、いかがでしょうか?ちなみに斉藤由貴さん、昨年は不倫騒動で再び話題に。恋はいまだ卒業せず。です。
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(つづく)
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Our Covers #020 野田晋平