魅惑のオンラインショップ《パライソレコード》がお贈りする、カヴァーソング桃源の世界。
野田晋平(パライソレコード)
Ep.29 / 7 July 2022
もはや亜熱帯気候かと言わんばかりの日本の夏が始まってしまった…。いっそ気候のよいどこかへ高飛びしたいというわけで、今回はトルコの都市「イスタンブール」を歌ったジミー・ケネディ作詞、ナット・サイモンの作曲「イスタンブール(ノット・コンスタンティノープル)」のカヴァーを特集。かつてはコンスタンティノープルだったイスタンブールで繰り広げられるエキゾチックなノベルティ・ソングは時代やジャンルや海を越え歌い継がれる!
オリジナルは1953年カナダ出身のヴォーカルグループ、フォー・ラッズによるヴァージョン。このエキゾチックなイントロで皆を虜にした基本形。のちのカヴァーはこの意匠を受け継いでいくことになります。
Istanbul (Not Constantinople)
フォー・ラッズのヒットの翌年に早くもリリースされたのが、俳優としてマリリン・モローとも共演したイギリスのシンガー、フランキー・ヴォーンによる「イスタンブール」。分厚いハーモニーで攻めたオリジナルに対抗すべくエキゾなフレーズをさらに盛ったアレンジ。
Istanbul
多言語を操り、日本語での録音も残すジャズシンガー、カテリーナ・ヴァレンテも1954年にカヴァー。ここではエキゾなアレンジを抑え強烈なビッグバンドサウンドとそれに負けない彼女のヴォーカルのパンチ力でキメた潔いヴァージョン。ノヴェルティソングという殻を破るような名演です。
イスタンブール・マンボ
ここ日本では洋楽カヴァーポップスの筆頭として美空ひばり、雪村いづみとともに〈三人娘〉として活動した天才江利チエミも1955年に吹き込み。見砂直照と東京キューバンボーイズ演奏によるラテンジャズアレンジが最高です!
イスタンブール・マンボ
半世紀近くにわたり音楽探求を続けるムーンライダーズ1977年のアルバムタイトルにもなった「イスタンブール・マンボ」。長尺のイントロもさることながら、日本語でのカヴァーが申し分なし!
Istanbul
なんでもかんでもこのビートに変換すればアリな汎用性の宝、ディスコにもやっぱりあった「Istanbul」。「Brazil」のカヴァーのヒットで知られるリッチー・ファミリーが手をかけるともはや節操のなさが目立ちますが、つまりは「Istanbul」がスタンダードソングとしてこれまで存在し続けていることの証といえるでしょう。もはや原曲の味わいは消え失せてますが笑。
Istanbul (Not Constantinople)
そして今も語り継がれることになる「Istanbul」の名カヴァーとして登場するのがアメリカのひねくれバンド、ゼイ・マイト・ビー・ジャイアンツによる1990年のヴァージョン。あのエキゾアレンジをオルタナ時代で再現。強烈なギターリフもフックとなった名演中の名演。彼らのちょっと狂った感じと「Istanbul」の怪しさが見事にマッチしています!
TVでのパフォーマンスがまた良い!
Istanbul (Not Constantinople)
エキゾ、怪しい、B級など「Istanbul」の持つ要素を抽出するとつまりはガレージになるということで、やっぱりやってた! サーフガレージの雄ファントム・サーファーズによる1996年作。サーフギターでズンドコ攻めるインストヴァージョン。やっぱこれですな!
Istanbul (Not Constantinople)
その名の通りジャマイカを含むカリブ海サウンドをごった煮にする英国のバンド、スカ・クバーノ2005年作「アイ・カランバ!」のオープニングを飾る「Istanbul」。スカの裏打ちとキューバンサウンドのミクスチャーがたまりまへんな!
イスタンブール・マンボ
最後に大瀧詠一のデビュ−50周年を記念して2020年にリリースされた未発表音源『Happy Ending』に収録された「イスタンブール・マンボ」を。ドラマの劇伴として90年代に製作されていた歌入りヴァージョン。井上鑑アレンジ!
(つづく)
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