GUITAR GRILL<br>“カリプソのリズムって?”
feature #175

GUITAR GRILL
“カリプソのリズムって?”

ギターとカヴァーの美味しい関係。ギターにピントを合わせれば、あの曲もこの曲も味わいがガラリと変わる。ギタリストのワダマコトがカリプソ愛を香辛料にして熱く調理します。

ワダマコト
Ep.31 / 29 Apr. 2024

←Ep.30

カリプソのリズムってどんなですか? などと尋ねられることがたまにあるけれど、知れば知るほど色々だなぁと思うのだ。

戦前からのカリプソによくある、二拍目が休符になるトン・トントン…ってやつとか、ハイハットでスチャラカ刻むやつとか、大まかにはあるけれど、それ以外にもボレロっぽかったり、スウィングっぽかったりと、バリエーションはとても豊かだ。やはり歌詞の音楽ということなのだろう。リズムよりもむしろ、メロディの節回しの器楽っぽさのほうがカリプソの特徴である気もする。

というわけで今回は、そんな節操のないカリプソのリズムについて。ソウル+カリプソからソカが生まれたように、二つのジャンルを掛け合わせてでっち上げる伝統的なスタイルを眺めてみよう。

まずは、マンボ+カリプソ。とにかく流行りのリズムに手を出してみるのである。

Duke of Iron「Mambo Calypso

米国に渡って活躍したカリプソニアン、デューク・オブ・アイアンの名曲。中盤以降の、スキャットを交えてデスカルガ風に盛り上がるシーンだが、ラテン的な白熱の緊迫感はなく、なんだかのどかでそこが良い。

Lord Kitchener「Kitch’s Mambo Calypso

こちらは英国に渡ったレジェンド、ロード・キチナーによる同名異曲。だがキチナーは歌っていない。楽団による最高にエレガントで軽やかなインスト・ナンバーだ。メロディスク・レーベルに多く残された、この期の英国産カリプソの典型的なサウンド。

George Brown「Calypso Mambo

これもメロディスク録音で、こちらはカリプソが前に来るタイトル。デューク・オブ・アイアンと比べれば、随分と律儀にマンボしている感じはあるし洗練されてはいるが、カリプソ特有の抜け感はある。

ちなみに〈マンボの王様〉と呼ばれたNYラテン・シーンのレジェンド、ティト・プエンテによる同名異曲もある。「そうか、これがちゃんとしたマンボなのですね。すいませんでした」と謝りたくなってきたワダマンボです。

Tito Puente「Calypso Mambo

50年代半ばに流行し始めたラテン・ビートがチャチャチャなわけだが、やはりそれにも取り敢えず乗っかっておく逞しいスピリットを見習いたい。

Small Island Pride「Calypso Cha Cha

《COOK》レーベル録音。個人的に大好きなスモール・アイランド・プライドの洒脱な名曲。

これまた同名異曲がある。バミューダのカリプソ兄弟、タルボット・ブラザーズのロス・タルボットのソロ作である。ジャクソン5からマイケルがソロ・デビューしたのと同様に、ファミリー・グループの兄弟仲というのは国を問わず色々あるのかも知れない。とはいえ、ギターを置いてゴルフに興じるというのは感心できないが。そんなジャケット通りに、のほほんとリゾート感満点の一曲。

Ros Talbot「Calypso Cha Cha Cha

ジャマイカ産カリプソにもカリプソ・チャチャ、あります。

Count Lasha (Count Lasher) & His Calypsonians「Calypso Cha Cha

問答無用にキャッチーである。eyeshadow的にはこのメロディがボブ・マーリーのアノ曲のネタ元であるということを触れておくべきだろう。

Bob Marley「Rocking Steady」

ちゃんとカヴァーもので締めくくれたので、今回はここまで。次回もこの続きを。節操のないカリプソ・リズムの深い世界をお楽しみください。

(つづく)

Profile
カリプソ狂。結成20年を迎えるライヴバンド、カセットコンロスを率いるギタリスト / シンガー。ソロ活動ではWADA MAMBO名義でもアルバムをリリース。ブルース~ジャンプ&ジャイヴ経由カリプソ。BLUES & SOUL誌の連載ほか、音楽についての執筆業も。妻x1、クロネコx1、シロネコx2、と共に暮らしています。
音楽活動のない日は、東横線の綱島駅と大倉山駅が最寄りの、音楽と雑貨の店ピカントにいます。
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