冷めても熱いカヴァーの名品について。
武田洋 (eyeshadow)
Ep.4 / 15 Nov. 2021
Various『The International Elvis Presley Impersonators Convention』(Rhino Records) LP
小学生の頃、白いジャンプスーツを着てエルヴィス・プレスリーのものまねをする人をテレビでよく見かけた気がします。
海外では彼らのことを〈エルヴィス・トリビュート・アーティスト〉と呼び、現代でもアメリカのラジオやテレビ番組で根強く人気があるようです。
このアルバムはそんなプレスリーのコピーシンガーたちを集めた、題して『国際エルヴィスものまね大会』。1979年5月11日、世界100カ国以上から集まったとジャケットの裏面に書いてありますが、これはシャレ。
ジャケ裏ライナーノーツのジョークは続いて、
1979年には、世界中で2万人以上の人が、自分の職業を「プロのエルヴィス・プレスリーのものまね」としていた。これは、1975年から5,000人増加したことを意味し、現在の成長率が続けば、1986年には雇用可能な男性の11人に1人が〈キング・オブ・ロックンロール 〉のまねをして生計を立てていることになる。
こういうあからさまなホラ話、最高です。収録アーティストの来歴はこんな感じ。
Yankel Prestein
ヤンケル・プレステインは、世界で最初にして最古のエルヴィスのものまねをする人物だと主張している。彼の記憶が正しければ、ヤンケルがエルヴィスのまねを始めたのは、エルヴィスが生まれる1年前の1934年のことである。
Hound Dog Fujimoto
24本以上の邦画でエルヴィスを演じて人気を博したハウンド・ドッグは、名作『エルヴィス対ゴジラ』で最大の評価を得た。エルヴィスの生き方を忠実に再現しようとしているが、日本ではキャデラックの輸入が困難なため、代わりに金メッキを施してカスタマイズした人力車を7台所有している。
Gunga Maharesley
インドでは牛が神聖視されており、革ジャンを着ることができず、そのためエルビスのものまねをする人が極端に少なくなっている。
グンガは、最も熱狂的なプレスリーの模倣者の1人であり、インド政府にタージ・マハルの名称を《グレースランドマンションイースト》と改名するよう嘆願した。
音の方は、歓声や拍手、司会者による紹介が入る擬似ライブで、いずれの曲も2分足らずでサクッと終わり。仰々しいのに誰ひとりとしてプレスリーに似てないことに驚きます。
徹頭徹尾、レコードまるまるパロディだけでできているというところが堪りません。ユーモアと狂気と情熱を至上命令とした初期《ライノ・レコーズ》を代表する1枚。