冷めても熱いカヴァーの名品について。
武田洋 (eyeshadow)
Ep.6 / 15 Jan. 2022
Natalia Jiménez – La Gata Bajo La Lluvia (Sony Music Latin)
コカインを巡る男たちの戦いを描いた実録ドラマ『ナルコス:メキシコ編』が2021年11月配信のエピソード3でついに完結しました。血なまぐさいことこの上なく、起こる事件はすべて事実をもとにしたもの。当初は映画化が予定されていたそうですが、麻薬カルテルとの絡みや膨大なエピソードの量で断念し、Netflixオリジナルドラマの形となったようです。コロンビアを舞台にした本編から足かけ6年で全60話、最後までグイグイ惹きつけられっぱなしでした。
そして、この『ナルコス』シリーズはブラジル人シンガーソングライターのホドリゴ・アマランチが歌うテーマ曲「Tuyo」をはじめ、数々のオールディーズ、メキシコ曲、スペイン歌謡の挿入歌も素晴らしくてShazamを起動すること幾十度。目当ての曲が見つかるとストリーミングで聴くというのを繰り返していました。
気づいたらドラマだけじゃなく音楽にもハマってしまいまして、たどり着いたのがSpotifyのプレイリスト、その名も「Mariachi Mix」。
マリアッチの語源はフランス語のマリアージュ(婚礼)からきていて、結婚式などで演奏していたことに由来するといわれています。それとは別に、マリアッチという言葉はメキシコの固有語で、ハリスコ州中央部のコカ語がルーツとの説もあり。
情熱的な曲が多く…と書こうとしていま思い出しましたが、そういえば氷川きよしの曲に「情熱のマリアッチ」ってラテン歌謡がありましたね。“メキシコ伝統音楽のエッセンスと歌謡曲、演歌をほどよくブレンドした” が謳い文句のこの曲に限らずですが、マリアッチは演歌と相性が良く本質的に共通するところがあるように感じます。
さて、このプレイリストではじめて耳にしたのがナタリア・ヒメネスの「La Gata Bajo La Lluvia」。これにがっつりとやられてしまいました。なんて素晴らしいメロディだろう、吹っ切れた歌声だろう。
それもそのはず、スペインのシンガーソングライターであるナタリア・ヒメネスは、グラミー賞とラテングラミー賞を受賞し、ソロキャリアの間に世界中で300万枚以上を売っている超のつく実力者。毅然とした歌唱は伊達じゃありません。
恋人との愛と別れを歌ったこの曲、普遍的な極上のメロディで、昔どこかで聴いたことのあるような…と思って調べてみたところ、やっぱりカヴァー曲でした。原曲はロシオ・ドゥルカル。
スペイン出身の女優で、歌手としても成功を収めた彼女が1981年にリリースした『La Gata』に収録。いやいやこちらも素晴らしい。別離を決意した女性を表現しながらドラマチックに歌う姿はナタリアに負けず劣らずです。何度でも聴いてしまいます。
カヴァー曲が原曲への扉を開いてくれて、どっちも好きになるなんて最高の出会いです。
2022年も興味の赴くまま、琴線に触れる曲とのめぐりあいを楽しみにしたいと思います。