追悼 <br>“リー・ペリーはなぜインド映画の挿入歌をカヴァーしたのか”
feature #057

追悼
“リー・ペリーはなぜインド映画の挿入歌をカヴァーしたのか”

武田洋 (eyeshadow)
31 Aug. 2021

この夏、リリース順にアルバムを引っ張り出して聴いていて、やっぱりリー・ペリー最高だなと思いにふけっていた矢先の訃報。

中でも評価の高い『Return of Super Ape』はキラーすぎるコラージュ作品として個人的にもダントツで、一番好きな「Bird in Hand」は、夢うつつのファルセット・ボーカルが耳に残る摩訶不思議なダブ。今さらですが《ロッカシャッカ》レーベルがこのダブの原曲であるサム・カーティー「Milte Hi Ankhen」を去年10インチでリイシューしていたと聞いて、慌てて買って聴いていたところでした。

これがもう本当に素晴らしくて、しかもインド映画で使われていた曲のカヴァーということを知り、なぜリー・ペリーはそんな曲をダブにしたのだろうか…と不思議に思って色々と調べてみました。

《ドラム&ベース・レコーズ》の販売ページにはこうあります。

この楽曲は1950年代に印度で大ヒットを記録した映画「Babul」挿入歌のカヴァーで、その不思議なメロディーと妖しげなベースラインはかの名盤「Return Of Super Ape」にダブ・ヴァージョンが収録されてましたが、フル・ヴォーカルのヴァージョンは今回が初のリリースとなります。
Drum&Bass Records

原曲はこれ。なんとなく女性ボーカルをイメージしていましたがデュエットものでした。

いかにもインドらしいオリエンタルな曲調で、呪術的な「Bird in Hand」と比べるまでもなく明るめな曲。

Google翻訳によるとタイトルの意味は「Milte Hi Aankhein」=「会う目」。リー・ペリーのファンサイト《Eternal Thunder》に載っている歌詞を訳すと、

一目で恋に落ちた私たち。
私たちのロマンスの物語が始まった。
ああ、愛の情熱、どうやって表現すればいいのだろう。
一息ついて、夢中で恋に落ちた。
Eternal Thunder

というれっきとしたラブソング。そして驚くことにサム・カーティーはヒンディー語のままカヴァーしています。歌詞もおそらく原曲のまま。

老舗レゲエ情報サイト《REGGAE VIBES》に掲載されているインタビューによると、サム・カーティーは70年代半ばにデビュー曲「Brother Man」をリー・ペリーのもとでリリース。当時は教師をやっていてジュニア・バイルスの紹介でリー・ペリーと会ったようです。出自がインドと関係しているかは不明ですが、ヒンディー語ができたのは教師だったことと関係があるかもしれません。

ところで『Babul』とはどんな映画なのか、内容を調べてみました。

男1女2の三角関係が織りなす大仰な古典的ラブロマンス劇ながら、微妙に直球を避けた構成で話が進んでいき、ステレオタイプな恋愛劇から一転するラスト近辺の急展開に「えええええええ!!!!!」と衝撃が走る映画。
インド映画夜話

なんだか面白そうなのでちょっと観てみたい気もします。

大ヒットしたらしいのですが、当時のジャマイカでインド映画がどれぐらいポピュラーな存在だったのか、というのも気になるところ。

Wikipediaには「1840年代から1910年代にかけて年季奉公の契約労働者がジャマイカにやってくるようになり、約4万人のインド人が流入した」とあるので、この4万人をターゲットとして、インド映画が上映 / 放映されていたのだと推測できます。いまも国民の1.3%がインド系です。

調べてわかったのはここまで。結局、リー・ペリーがインド映画の挿入歌をカヴァーした理由はわからずじまいでしたが、この曲が録音されたのは1978年。脂の乗った42歳キレキレの彼が、キングストンの名画座(?)もしくはテレビでたまたま目にした古いインド映画。そのとき何かをひらめき、「Milte Hi Aankhein」をカヴァーするに至ったのか…。

案外、ブラック・アーク・スタジオの片隅にあるラジオからこの曲が流れてきて、たまたまそこにいたヒンディー語のわかるサム・カーティーが鼻歌を歌い、それを耳にしたペリーが大喜びで即興録音した…というのがリー・ペリーらしい真相のような気もしますが、興味は尽きません。

享年85歳。ご冥福をお祈りします。

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