冷めても熱いカヴァーの名品について。
武田洋 (eyeshadow)
Ep.8 / 15 Mar. 2022
Rufus Harley – Love Is Blue (Atlantic)
今月はこちら、バグパイプの名手ルーファス・ハーレイによる「Love Is Blue」。
日本では「恋はみずいろ」のタイトルで、ポール・モーリアがイージーリスニング調にカヴァーしたインスト曲でお茶の間にも浸透しました。ダイエーの旧閉店予告BGMでもあり、昭和の頃はあちこちのスーパーやデパートで流れていたので、このメロディを耳にした人は相当な数になるんじゃないかと思います。
原曲はポール・モーリアと同じくイージーリスニングや映画音楽を手掛けていたフランスの音楽家、アンドレ・ポップの作曲。ボーカルはギリシャ出身の歌手ヴィッキー・レアンドロス。1967年4月にオーストリアで開催された〈ユーロビジョン・ソング・コンテスト〉にルクセンブルク代表として出場、この曲を歌って4位を獲得しています。ちなみに4位ではありますが、同コンテストで世に登場した歴代の曲の中で、もっとも売れてもっともカヴァーされた曲とのこと。このときの曲名はフランス語の「L’Amour Est Bleu」でした。
コンテストからほどなくポール・モーリアがカヴァー、1968年1月に「Love Is Blue (L’Amour Est Bleu)」のタイトルでシングル盤をリリースします。これがまたたく間にヒットして〈Billboard Hot 100〉1位を記録。イギリスでは全英シングルチャートで最高12位を記録し、日本では約12万枚のセールスを叩き出してオリコンチャート最高18位を獲得。世界的には500万枚を売り、彼の代表曲となりました。
ポール・モーリアの大ヒットから2年後、本盤の主役であるルーファス・ハーレイが同曲をカヴァー。彼は世界初のジャズ・バグパイプ奏者で、「Love Is Blue」収録の『King / Queens』はリーダー作品として4枚め、1970年のリリース。
そもそもなぜバグパイプでジャズをやろうとしたのか疑問に思い、調べてみました。彼は元々サックス奏者でしたが、ジョン・F・ケネディの葬儀でブラックウォッチ連隊楽団の演奏を聴き、バグパイプに転向したといいます。ブラックウォッチ連隊はスコットランド王立連隊の歩兵大隊のことで、楽団はこのときアメリカでチャリティ公演を行っていましたが、滞米中にケネディが暗殺され葬儀で演奏することに。外国軍が参加した史上初の米国大統領の国葬として記録されています。なんと、ケネディの暗殺が巡り巡ってバグパイプ版「Love Is Blue」につながっていたんですね。
それではお聴きください、ルーファス・ハーレイ「Love Is Blue」。
ハウス・オブ・ペイン「Jump Around」のような不穏な出だしから一転、ファンキーなドラムに乗せて華麗なメロディが奏でられるオリエンタルな仕上がり。上手い下手を超越した味わいがクセになります。いいカヴァーですね。
さて、「Love Is Blue」といえばレゲエにもナイスなカヴァーがありまして、《WIRL》レーベルから1968年にリリースされたウィンストン・フランシスの歌もの。朴訥とした演奏と歌声が心に沁みます。
そしてジャッキー・ミットゥのこちらも外せません。
他にもこんなカヴァーがあり。
インストのカヴァーが多いのはメロディが素晴らしい証拠。「Love Is Blue」は年を重ねるごとに麗しい旋律が身体に溶け込んでくるように感じてなりません。