Oh Girl
feature #101

Oh Girl

冷めても熱いカヴァーの名品について。

武田洋 (eyeshadow)
Ep.11 / 15 June 2022

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Young-Holt Unlimited『Oh Girl』 (Atlantic)

今回は、YouTubeにあるカヴァー曲を毎日ご紹介する〈EyeTube〉でも取り上げたヤング・ホルト・アンリミテッドの「Oh Girl」を。

昔からインストが好きで、20代の頃、何かの拍子で耳にして「俺が聴きたかったのはこれだった」と思ったのが彼らの曲でした。ジャズとソウルの中間ぐらいの音色が心地よく、ドラムとベースとピアノだけのシンプルな編成も自分の好みにバッチリ合っていました。

シカゴ出身のヤング・ホルト・アンリミテッドは、1966年にラムゼイ・ルイス・バンドのドラム&ベース、アイザック・ホルトとエルディ・ヤングに、ピアノのドン・ウォーカーを入れたヤング・ホルト・トリオが前身。トリオ名義時代にはジャズソウルクラシックとなる「Wack Wack」をリリースして〈ビルボード・ホット100〉の40位を記録しています。

1968年にはヤング・ホルト・アンリミテッドに改名、ウォーカーに代わってカナダ出身のジャズピアニストのケン・チェイニーが加入します。この時に「Soulful Strut」のヒットを飛ばすのですが、この曲はいわくつきで、「ソウル&ファンク大辞典」によると、

この曲は元々バーバラ・アクリンが「Am I the Same Girl」としてレコーディングしたものだが、なぜかカール・デイヴィス(引用註:プロデューサー)の決断により、ヴォーカルをカットし、ヤング・ホルト・アンリミテッドのインスト曲として先行リリースされる。そして、さらに謎なのがエルディ・ヤングもレッド・ホルトもこの曲のレコーディングには関わっていないという噂だ。さらにピアノもケン・チェイニーではなく、別人物が弾いているらしい。つまりこの曲は、事実上ヤング・ホルト・アンリミテッドの名を借りたBrunswick(ブランズウィック)のプロデューサー&スタジオ・ミュージシャンの作品なのかもしれない。※一部抜粋

とのこと。インスト先行リリースの謎、ヤング・ホルト・アンリミテッドのメンバーが誰ひとり参加していない可能性…ちょっと頭が混乱してしまいます。

さて、今回ご紹介の「Oh Girl」は1973年リリースの同名アルバム『Oh Girl』に収録。1曲めはアラン・トゥーサンの作詞作曲でポインター・シスターズのヒット曲として有名な「Yes We Can Can」をカヴァーした「Yes We Can」に続いて2曲が「Oh Girl」、この流れがまた良いんですよね。

Young-Holt Unlimited「Yes We Can」(1973年)
Young-Holt Unlimited「Oh Girl」(1973年)

乾いたドラムのミディアムテンポ「Yes We Can」から一転、淋しげなピアノのメロディが印象的なメロウインスト。全編にわたって漂うストリングスの音色も効果的です。

原曲はシャイ・ライツ。1972年に発表、彼らの初にして唯一の〈ビルボード・ホット100〉1位を獲った曲です。要所要所で流れるハーモニカが切ないことこの上なしのマスターピース。曲を書いたのはリードボーカリストのユージン・レコードで、ちなみに先ほどの「Soulful Strut」も彼の手によるものでした。

https://youtu.be/JCDqE1o6sJE
The Chi-Lites「Oh Girl」(1972年)

ヤング・ホルト・アンリミテッド以外のカヴァーとしては、ハーモニカとソウルフルなコーラスを取り入れて原曲を忠実になぞった1990年リリースのポール・ヤング、

Paul Young「Oh Girl」(1990年)

南米のガイアナ共和国のバンド、ヤング・ガンズ・オブ・ガイアナのねっとりと甘いカヴァー、

The Young Ones of Guyana「Oh Girl」(1973年)

アメリカのパンクロックバンド、ミー・ファースト・アンド・ザ・ギミー・ギミーズ、

Me First and the Gimme Gimmes「Oh Girl」(2003年)

がおすすめです。

ヤング・ホルト・アンリミテッドはその後1974年に解散し、ヤングとホルトの2人はラムゼイ・ルイスの元に戻ったそうです。2人で離れて、数十年後に2人で戻る…その裏には一体何があったんでしょう。気になります。

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