武田洋(eyeshadow)
24 MAY 2020
ゴールデンウィークの大掃除で24年ぶりに出てきた2本のカセットテープ。手書きのラベルには『D.L ON THE 1&2 APRIL.24 ’96』とある。僕が《レコードショップCISCO》を辞めた後、渋谷宇田川町で始めた《0152Records》のオープンから数ヶ月の間、買い付けを手伝ってくれていたデヴ・ラージが、店番をしながら店内にあるレコードを使って即興で作ったミックステープだ。ビル・コブハム「Spanish Moss – A Sound Portrait: Flash Flood」、シル・ジョンソン「Could I Be Falling In Love 」などのレア・グルーヴやソウル・バラード、ブッダ・ブランドのサンプリング・ネタなど、ゴリゴリな要素とメロウネスが共存したD.Lならではの音が詰まっている。
当時からレコードの知識は半端じゃなく豊富だった。彼がCISCOのNY現地コーディネーター兼バイヤーとして、CISCO渋谷本店のスタッフだったKZAや園田くんの買い付けサポートをしていたのは92~93年頃だったと思う。初めて会ったのはその頃でCISCOレゲエ店の仕入れのためジャマイカ出張する際にNYへ立ち寄った時。空港まで迎えに来てくれて、煙草を吸おうと屋外の喫煙所へ2人で行くと、その場で自己紹介のラップが始まった。初対面でいきなり、こんな間近で面と向かって周りにたくさんの人がいるにも関わらず、躊躇なくフリースタイルでラップする度胸とセンスには心底驚いた。
D.LといえばULTRA MAGNETIC MC’Sのマニアとしても知られるが、ILLMATIC BUDDHA MC’S名義で彼らのカヴァー曲も残している。86年の名曲「Bait」を日本語でリメイクした「Bait 2005」。ダイナミックな即興性やドス黒い様は『D.L ON THE 1&2 APRIL.24 ’96』の世界観そのままだ。このテープを聴くと、ブッダ・ブランドの代表曲「Illson」のパンチライン “まだまだ大作 奥にしまってる” は本当だったなとつくづく思う。
この音源が日本のHip Hop史の断片として記録されることを願ってシェアさせていただきました。敬意と感謝を込めて、ありがとう今くん。
『Hit “Em” Hard』のジャケットをベースに、
デヴ・ラージがコラージュした《0152Records》の看板。