Numero Group
feature #006

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マニアを唸らす音源の再発見で、コンピレーションアルバムを次々リリースする《ヌメロ・グループ》は、世界中の音楽コレクターの間でカルト・レーベルの地位を獲得。
2003年から続く膨大なカタログの中を覗くと、『Cult Cargo: Grand Bahama Goombay』(2007年)ではデイブ・ブルーベック・カルテット「Take Five」の聴いたことのないカヴァーがあり、Niela Miller『Songs of Leaving』(2009年)にはジミ・ヘンドリックス「Hey Joe」のオリジナルといえる「Baby Don’t Go Downtown」が入っていたりと、これまでスポットが当たることのなかった楽曲をリパッケージングし続けています。
シカゴをベースに活動する《ヌメロ・グループ》の創業者のひとり、ケン・シップリーに話を聞きました。

Photo: Adam Jason Cohen / Leland Meiners
Support: Caroline Mort
12 SEP 2019

eyeshadow (以下E): リリースする作品はどのようにして選んでいますか?

ケン・シップリー (以下K): 《ヌメロ》レーベルのスタッフは現在総勢13名ですが、そのほぼ全員が、クリエイティヴな選曲作業に関わっています。目当ての音楽は、私たちが入手した貴重なマスターテープから、みんなでディグしているYouTubeの映像に至るまでの、さまざまなところから発見できます。この時代、音楽の探し方にはいろいろな方法があるわけですし、我々のやり方も柔軟でいいと思っています。
すべてをプレスする必要はありませんし、すべてに5,000字の長いライナー・ノートをつける必要もありません…本当に素晴らしいことに、私たちチームはベストな方法で取り組んでいます。

E: 選曲や曲順を決める上で大切にしていることはありますか?

K: A面の1曲目は2曲目へと導き、A面ラストの曲は、このLPをひっくり返したいと思わせるものであるべきです。B面のラストの曲はリスナーにこのレコードをもう一度裏返し、また最初からまるまる聴き返したい気持ちにさせるべきである、ということですね。

E: 《ヌメロ》レーベルではオリジナル盤を再現した復刻ではなく、主にコンピレーションとして数多く発表していますが、編集盤をリリースし続ける理由は何でしょうか?

K: リリースするアルバムのほとんどは、リパッケージングすること自体が私たちの意図するテーマの結論になっています。すなわち、〈アート・フォームとしてのコンピレーションの究極の表現〉です。それは、単一アーティストによるアルバムとしても展開できる考え方なのですが(キャサリン・ハウ、ウイリー・ライトや、エッジ・オヴ・デイブレイクなどがその好例かもしれません)、しかし大抵の場合、単独アルバムはサブ・レーベルの《1200 Line》の方にまとめようと考えています。その方が、アーティストのオリジナル・ヴァージョンに対して忠実なリリースができるのではないかと思うからです。

E: ストリーミングのプレイリストで音楽を楽しむことが一般的になった現在、コンピレーションをリリースする意義についてどのように感じていますか?

K: この2019年に“コンピレーション・アルバム”というものが価値あるものかどうか、私たちに確信はありません。誰にでもコンピレーションは作れますし、外に持ち出して電車の中で好きに聴くこともできます。そんな時代に、私たちの作品を買ってくれる人たちへ真の価値を提供するためには、期待値以上のものを作らなくてはいけないわけです。
そのためにはいくつかのやり方が考えられます。“今までに知られていない興味深いセレクションにする” “パッケージングに対する考え方自体を全く新しいものにしてみる”、あるいは“思索的なライナー・ノートにする”…など。私たちのチームはモノづくりに関して意外と上手ですし、おそらく現在進行形のどのリイシュー・レーベルよりも優れていると思っています。そしてそれに対して誇りを持っています。この達成感を、みなさんと共有できていればいいなと思います。

E: Apple MusicやSpotifyでも素晴らしいプレイリストを公開していますね。

K: プレイリストは現代のコンピレーションです。市場の進化にあわせた《ヌメロ》のアプローチは、様々な形でリスナーのみなさんの元へ届きます。私たちは今後も素晴らしい未知の音楽の発掘作業をやめることはありませんが、古いフォーマットだけに頼っているようでは、自分たちで考えているよりずっと早くこの世界で通用しなくなります。

E: これまで11回のグラミー賞推薦を受けていることについて感想をお聞かせください。

K: 同業者たちから優れた存在として認められることに対して、信じられないほどの満足を感じていました。しかし年月が経つにつれて、一部の人々の評価にそれほど興味を持たなくなりました。
私たちはレコードを作っているのではなく、アートを創造しています。芸術はしばしばその“生涯”のうちには理解されないことがよくあります。私が死んだあとに、小さなトロフィーを墓の上に置いてもらえたらそれでいいのです。

E: リリースした中で思い入れの強い作品があれば教えてください。

K: 意外に思われるかもしれませんが、自分たちのリリースしてきた過去の作品に対して、特別な感情はあまり抱いていません。現在取り組んでいる作品にもっとも興味を持っています。それでも、これまでの16年間のハイライトを挙げるとするならば、『Basement Beehive: The Girl Group』、シル・ジョンソン『Complete Mythology』、そして『Eccentric Soul: The Capsoul Label』です。

E: 今後、掘り下げてみたいジャンル/アーティスト/レーベルはありますか?

K: 最高のブルーズのカタログを見つけたい、あるいはジャズの《ダイアル》レーベルのマスター・テイクを手掛けてみたいですね。私たちはいつも次を探していますが、とはいえ具体的な何かを明確にして追い求めているわけではありません。

E: 古い音源を聴くことの意味や楽しさはどこにあると思いますか?

K: 私たちは今、とてつもない時代を生きてます。お金をかけなくてもノスタルジックに浸ることができますし、音楽の歴史の大部分に一瞬でアクセスできる時代です。そんな今、過去の隅々を奥深く振り返ってみるのは当然のことではないでしょうか。

E: カヴァーの元となる曲も過去のものです。《ヌメロ》が表現していることは自分たちの感性で過去音源を問い直すという意味で、カヴァーと同義のようにも感じます。

K: 今のところ、私自身カヴァー曲に興味があるのかどうかはわかりません。私はこれまで誰も聴いたことがない曲を見つけることに、より一層夢中になっているからです。

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Profile
元々はオハイオ州の《キャップソウル》レーベルのソウル/R&B音源をリイシューする目的で2003年に設立。創業者はトム・ラント、ロブ・セヴィエ、ケン・シップリーの3名。現在は商業的な成功を得られなかったアーティストやレーベルの楽曲を中心に、USブラックミュージックからロック、ラテン、カリブなど幅広くも奥深い、濃密な作品のリリースを続けている。
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