Title
Treaty
Artist
Cande y Paulo
Original
Leonard Cohen - Treaty
アルゼンチンは主にヨーロッパ移民による多民族国家で、文化もヨーロッパ的ではありますが、音楽においてはフォルクローレという汎南米由来の民族音楽が盛んな国です。フォルクローレでは、もちろん新曲も日々作られていますが、誰かの曲をカヴァーするということがごく当たり前であり、アルバムをカヴァー曲だけで構成するということも稀ではありません。また、特にそれがカヴァー・アルバムだと特筆されるものでもないのです。その中でも、アルゼンチン北西部サン・フアンで活動するコントラバス奏者、歌手のCande Buassoと鍵盤奏者Paulo Carrizoによるデュオ、Cande y Pauloが世界的デビューを果たしたことは驚きでした。彼女たちはYouTubeで、アルゼンチンのみならず南米を代表するロック・スター、ルイス・アルベルト・スピネッタ(Luis Alberto Spinetta)「Barro tal vez」のカヴァー動画を2017年にアップ。その動画が1000万回再生を超えたことで注目を集め、ついにはJoni MitchellやHerbie Hancockのプロデュースで知られるベーシスト、プロデューサー、Larry Kleinの元、名門Deccaと契約。2021年に待望のデビュー作を発表しました。ここで選んだのは、そのアルバムの冒頭曲で、カナダを代表するSSW、Leonard Cohenの最晩年、2016年に発表された『You Want It Darker』収録の「Treaty」です。今作ではアルゼンチンのフォルクローレを代表するギタリストで作曲家のAtahualpa Yupanquiから、デビューのきっかけとなった「Barro tal vez」というアルゼンチンの音楽のみならず、ジャズ・スタンダードからブラジル音楽、The Velvet UndergroundからFeistまでカヴァーしています (日本盤ではボーナストラックとして梶芽衣子「修羅の花」をなんと本人参加でカヴァーも!)。アルゼンチンのカヴァー文化を紹介するうえで、これ以上の作品はないかと思い、最初に選んでみました。