②『オズの魔法使』でJudy Garlandが歌った「Over the Rainbow」のジャズ・カヴァー、その中でも基本的にはインスト・カヴァーのみをお題としてみました。宜しくお願い致します。自分はホンカー系サックスの咽び泣きのバラードが大好きです。この事について語り合う友もおりませんので個人の愉しみです。酒が旨いし。最高。最近はフリー/アヴァンかピアノ・ソロかホンカー・バラードばかり聴いています。まるで淋しい人みたいですね。それ故ですが自分の一番好きな「Over the Rainbow」のジャズ・カヴァーはBen Websterのヴァージョンです結論。ワンホーンが深く深く、寄り添うピアノもまた素敵です。毎夜咽び泣けます。ひとりかも寝む。
⑤次はコマが追いついてませんがChet Bakerです。本曲収録の62年作『Chet Is Back』はどこから‘Back’したのかというと色々あってのいわゆる「お勤めご苦労様です」なイタリアでの録音作です。バックはイタリアのみならずヨーロッパ各国からのセクステット。色々調べていたのですけれどこの曲のトランペッターのカヴァーって意外に少なくって、もしかして2音目のハイノートがキツイのかなとか思ったりしてChetもハイノートを避けるように急に1オクターブ下げたりしてますが、そんな事ないですかね。ちゃんと吹いてるとこもありますしね。無粋ですね。純粋にロマンチックに浸りたいですよね。
⑧意外にも、かどうかは分からないですがSun Raはライヴ盤含めてこの「Over the Rainbow」を収録したアルバムを幾つかリリースしています。そして意外にも、かどうかはやっぱり分からないのですが、かなりご機嫌なアレンジでカヴァーしています。リリカルなピアノ・ソロのイントロから徐々にメロディーが不穏な左手とともに現れ、時に破壊衝動に突き動かされてしまうSun Ra御仁。と思いきやそこからはスウィンギーなプレイに変わりお客さんからは拍手と笑い声。ど頭のみホーンが参加ですがその後はピアノ・ソロとピアノ・トリオです。
Title
Rainbow
Artist
Sam Rivers
Original
Judy Garland - Over the Rainbow
⑨77年に「Vol.5」までリリースされたニュー・ヨークのロフト・ジャズを伝えるコンピレーション・シリーズの「Wildflowers」。このシリーズの陣頭指揮者でもあったSam Riversによる「Over the Rainbow」は冒頭のソプラノのカデンツァ・ソロでほんの時々その節を思わせるフレーズも出てきますが、あくまで「Over the Rainbow」は題材といったところ。そして最後はGlobe Unityを仕切ったドイツのインプロ・ピアニストAlexander von Schlippenbachとスウェーデンの異端ミュージシャンSven-Ake Johanssonのデュオです。ドラムを叩きながら一部Johanssonが歌ってますが、これはこのご両名にピンと来た方にチェックいただければいいかなと思います。
Title
Over the Rainbow
Artist
Alexander Von Schlippenbach / Sven-Ake Johansson
Original
Judy Garland - Over the Rainbow
⑩このお話をいただいてまずはテーマを決めなきゃ書けなそうだな....とさんざんに悩んだのですが、自分も好きで多くの方が知ってるカヴァー楽曲が楽しめるかしらと思い『ティファニーで朝食を』の「Moon River」かこちらの「Over the Rainbow」にしようかなといったところで、「Over the Rainbow」の方が自分の知っている範囲でヴァラエティ豊かなカヴァーがあったので、今回「Over the Rainbow」をテーマに書かせていただきました。最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。楽しく書かせていただきました。音源も何処かで聴いていただければ嬉しいです。ではでは今宵も一人酒を愉しみましょう。
Profile
ヴィンテージ・レコード・ディーラー&ショップElla Rrecords所属。かつてはDANCE MUSIC RECORDのジャズ・バイヤーとして新譜を供給し、ライターとして“Jazz Next Standard”シリーズや「Jazz Meets Europe」、「500 Club Jazz Classics」、“Jazz The New Chapter”シリーズ等の書誌や多くのライナーノーツ等へ新旧問わずジャズ / クラブ・ミュージックに関する執筆 / 寄稿、またDJ / 選曲活動を行う。