カマタヒロシ
Our Covers #099

カマタヒロシ

DJ / BONUS BEATS CHANNEL

〈洋楽黄金期〉の80年代、学校から帰ったら録画していた『ベストヒットUSA』や『SONY MUSIC TV』のVHSを毎日飽きることなく夢中になって観ていた。
特に知識もなく、特定のジャンルで音楽を区別することもなかったが、あの頃ヒット曲として気になっていた曲のオリジナルが、後に出逢っていく様々なジャンルの中で登場し「コレってカバーだったのか?」と驚いた。ここに挙げた〈ベタ中のベタ〉な洋楽シングル10枚は全て私の音楽遍歴の素養となっている。

Love of the Common People
Title

Love of the Common People

Artist
Paul Young
Original
The Four Preps - Love of the Common People
英国ブルーアイドソウルシンガー・ポールヤング、デビューアルバムからのカットで英2位のヒットシングル(1983年)。当時はどれもカバーだと知らずに聴いていたが、アルバムではマーヴィンゲイから、なんとジョイディヴィジョンまでソウルフルにカバーしている。原曲は60sソウルのグループによるものだが、後にニッキートーマスというシンガーのレゲエカバーを聴き「コレってポールヤングの曲!?」と。それを知ってから改めて聴くと、どことなくレゲエ風に聴こえるし、これも後から知ったのだが、リコロドリゲスがトロンボーンを吹いていてビックリ。
The Tide Is High
Title

The Tide Is High

Artist
Blondie
Original
The Paragons - The Tide Is High
文字通り米英チャートで「夢見るNo.1」となったブロンディのヒットシングル(1981年)。後に英《TROJAN》のコンピでオリジナルを知って驚いた曲。元々NYCアンダーグラウンドシーンを形成するグループの一つだったが、クリスステインのセンスとデボラハリーのアイコニックな魅力が上手く機能して売れまくった。この曲と続く「Rapture」で連続1位。この時代にレゲエとラップを採り入れて全米1位だなんて、とんでもない偉業だ。もし、コレがクラッシュだったら、みんな熱く語るだろうに、なんだか不公平な気がする 笑
こんなに大ヒットして、作曲者のジョンホルトには一体どれくらいの印税が入ったのだろう? 一説にはスペシャルズをバックに起用して録音する計画だったらしいが実現していたら…。
Sea of Love
Title

Sea of Love

Artist
The Honeydrippers
Original
Phil Phillips - Sea of Love
レッドツェッペリン(ZEP)のロバートプラントによる覆面バンド? ハニードリッパーズ、米3位の大ヒット(1985年)。当時の僕はZEPをオールドなバンドとして捉えていて全く興味がなかったのだが、ビデオを観ると、どの曲もオールディーズな雰囲気で、ストレイキャッツが好きだった僕も一発で気に入ってしまった。ジェフベック、ジミーペイジ、ナイルロジャースの名前がメンバーとして挙げられていたが、実はブライアンセッツァーもゲスト参加していたらしい。この曲はロックステディのヘプトーンズが歌っていて「あー、この曲は!」って後に嬉しい出逢いへと繋がる。
Just a Gigolo / I Ain't Got Nobody (Medley)
Title

Just a Gigolo / I Ain't Got Nobody (Medley)

Artist
David Lee Roth
Original
Louis Prima - Just a Gigolo/I Ain't Got Nobody
「80s洋楽の代表曲と言えば?」ヴァンヘイレン「ジャンプ」を挙げる人も少なくないだろう。同曲を含むアルバム『1984』が大ヒットを記録している最中、突如ソロ活動を始めたデイヴリーロスのミニアルバムからのシングル。第一弾シングルはビーチボーイズ、続くこの曲は1920年代の楽曲がベースになっているが、50年代のルイプリマによるメドレーをカバーしており、先述のハニードリッパーズ同様ハードロック系ヴォーカリストがこのようなカバーをやるセンスには驚かされたものだ。が、よく考えたらヴァンヘイレン自体がキンクス、ロイオービソン、マーサ&ザ・ヴァンデラスなど、カバーセンスの良さを見せていたバンドだったから納得。
Walk This Way
Title

Walk This Way

Artist
Run-DMC feat. Steven Tyler and Joe Perry
Original
Aerosmith - Walk This Way
ヒップホップをメインストリームに押し上げた1986年の大クラシック。他に挙げたカバー曲は後からオリジナルを知ったパターンだが、この曲に関しては先にエアロスミスを聴いていた。高校生の僕が恐る恐る通っていたロック喫茶のマスターが70年代のエアロスミスのレコードをいっぱい聴かせてくれたから。80年代初頭のエアロスミスは低迷し、過去のバンドになっていたが、この曲以降、再ブレイクを果たし、モンスターバンドになっていく。ただ、当のRUN DMCはエアロスミスに興味があった訳ではなく、あくまでネタとして、ブレイクビーツ教典『Ultimate Breaks & Beats』にも収録されていた、この曲のイントロのドラムブレイクを使ってラップしていただけらしい。とは言え、スティーヴンタイラー達が〈本人登場〉したビデオの存在がなければ、これほどまでの大ヒットにはならなかったのでは? 僕自身も含めていろんな人の人生に影響を与えた曲だと思う。
Harlem Shuffle
Title

Harlem Shuffle

Artist
The Rolling Stones
Original
Bob & Earl - Harlem Shuffle
ストーンズ、1986年米5位のヒットシングル。全く触れられることはないが、レコーディング時のバックヴォーカルにはアイヴァンネヴィルやジミークリフ、ドンコヴェイ、トムウェイツらが参加しており、なんて贅沢なバンドだ! 見えない部分にお金かけるお洒落か。原点回帰とも言えるようなデビュー時60sのノーザンソウル、R&Bヒッツをカバーしているのだが、ラルフバクシーによるカートゥーンアニメのヴィジュアルイメージも相まってストーンズの持つヒップな世界観を上手く引き出している。後々になってオリジナルのボブ&アールのヴァージョンを聴いたら、イントロのファンファーレみたいな音がハウスオブペイン「Jump Around」のサンプリングネタでビックリ!
It Must Be Love
Title

It Must Be Love

Artist
Madness
Original
Labi Siffre - It Must Be Love
僕もいわゆる2トーン系バンドやUB40など、英国経由でスカやレゲエのカッコ良さを知ったが、僕の世代だと短命に終わったスペシャルズよりマッドネスの方がアメリカでシングルがヒットしたり、日本のテレビCMにも出てたりで、よりリアルタイムなバンドだった。クールなスペシャルズに対してコミカルなマッドネスって感じだったが、この曲は真っ当なラブソングとでも言えるような〈エエ曲〉路線。しかもオリジナルはラビシフレ。渋い。いかにも英国的センスで英4位の大ヒット。ついでにアメリカでも33位と初のトップ40入り。あまりにも良すぎて92年にリイシューしたら、また売れて6位まで上がったほど。誰か日本語でカバーしてみたら?
Baby, I Love You
Title

Baby, I Love You

Artist
Ramones
Original
The Ronettes - Baby, I Love You
〈ライダースを脱いだラモーンズ〉が印象的なジャケのアルバム『End of the Century』(1980年)からのシングル。プロデューサーがフィルスペクターでロネッツのカバーなんて〈やらされてる感〉丸出し、というか実際メンバーが嫌がってるのに無理矢理やらせたらしいし、ストリングスを多用したサウンドを気に入っていない、とも。評論家からの評価も低い。しかし、聴いてみると意外に悪くない、どころか僕はかなり好きだ。「1-2-3-4 !」じゃない、ゴージャスなラモーンズ。実際、英国では8位と最大のヒットになったし、アルバムも14位まで上がった。少なくとも本国より英国ファンには支持されていたのだ。
Breakaway
Title

Breakaway

Artist
Tracey Ullman
Original
Irma Thomas - Breakaway
TVタレントや女優として活躍していたトレイシーウルマンの歌手デビューとなったシングルで英4位のヒット(1983年)。僕が彼女の存在を知ったのは次のシングル「They Don't Know」で、こちらはアメリカでもヒットしたから『ベストヒットUSA』でビデオをよく観たし、最初はシンディローパーみたいな人だなって印象だった。元々ストレイキャッツで洋楽に目覚めたので、当時の50s-60sっぽいファッションも含めた流行に影響されていて、ゴーゴーズとか、このトレイシーみたいなオールディーズ、ガールポップな雰囲気は特に好きだった。後々オリジナルのアーマトーマスも7インチ購入したが、フロアでの盛り上がりは、ややトレイシーに軍配か。
Behind the Mask
Title

Behind the Mask

Artist
Michael Jackson
Original
Yellow Magic Orchestra - Behind the Mask
この曲は今回紹介した流れからすると番外編的な扱い。坂本龍一作曲、YMOの2ndアルバムに収録され、なぜか日本国内ではシングルカットされていないが、欧米では当初からライヴで非常に人気の高い1曲だったらしい。〈世界で最も売れたアルバム〉とギネス認定されたMJ『スリラー』にカバーを収録するべくデモまで録音していたが条件面で破断し、幻となっていた。もし、あの時『スリラー』にこの曲が入っていたら…。考えれば考えるほど惜しい。何しろ現在までの累計売上枚数は7,000万枚とも言われ、アルバム収録曲9曲の内、実に7曲がシングルカットされ、そのどれもが全米トップ10ヒットという、ただのベスト盤みたいなモンスターアルバム。当然この曲もシングルになっていたであろう。どれだけの富を築いたことか。大きなお世話か。時を経てマイケル死去後に新たなアレンジが施されリリースされたのがコレだ。ちなみにエリッククラプトンのカバーも存在するが好きじゃない。結局オリジナルのYMOが一番良いのかも。
Profile

DJとして長いキャリアを持ち〈カリブ海発世界経由舞踏音楽〉ミックス 『HOTTEST HITS』シリーズで知られ、ライターとしてZOOT16やソクルセット、クボタタケシ等のプロフィールやライナーノーツの執筆・編集を手がける。現在、その溢れる7吋(インチ)シングル愛をグラフィックに詰め込んだスーヴェニアブランド 7ip (Seven-inch Punch) を展開中。
ラジオ生活30周年を機に2023年よりレコードとカルチャー好きの集大成としてスタートさせたポッドキャストプログラム『BONUS BEATS CHANNEL』の企画及びMC担当。Spotifyにて公開中。
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